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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

海底に国旗を立てて領有権を主張する
中国に日本はこんなに無防備でいいのか

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第36回】 2010年9月22日
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 日本では中国の資金面での脅威はどこにあるのだろうか。最近の顕著な動きは、中国が膨大な対米黒字から得たドル資金を米国国債の購入ではなく日本国債を買うようになったのである。確かに米国財務省の資料を見ると中国はこの半年間に米国国債の保有高を1割ほど減らしている。

 日本国債の93%は日本の金融機関が保有しているが、残る7%の中で中国政府が最大の債権者になった模様である。日本政府は中国政府の購入を歓迎しているようであるが、国債管理はより難しくなったと見るべきだろう。中国がもし日本国債を大量に売却すれば、金利は高騰し、日本の財政収支は一気に悪化する。中国側がこの手段を意図的に使うと大きな攪乱要因になる。

 中国政府の動かせるドル資金の規模が極めて大きいだけに為替市場への影響も無視できない。最近の80円台なかばへの円高は中国による国債の大量購入がひとつの原因と考えられる。このことは何を意味するのか。中国政府は日本国債の大量購入により円高を作り出し、日本の輸出にブレーキをかけることができるようになったということである。

 中国は今後、軍事面、領土面、資金面で日本を含むアジア諸国に更に強い影響力を及ぼすであろう。中国が日本にとって最大の貿易国であるにもかかわらず、軍事面、領土面での中国は違う顔を覗かせる。アメリカにとっても今や最大の貿易相手国は中国である。だが、アメリカ政府は中国に対して経済面の親密さと、軍事面の脅威とを峻別して考えている。

 日本ではこの峻別ができていない。中国を情緒的に捉えている。今回の民主党の代表選挙でも、国防が全く論点にならなかったのはこうしたところに原因があるのではないだろうか。

 日本国民が国防の観点から大きな決断をしなければならない時は刻々と近づいてきている。米国と同盟強化を図るのか?それとも、曖昧なままズルズルと中国の強硬な外交圧力に屈していくのか?日本人はこの数10年、明確な国家戦略を持ったことがない。

 だが、もしこの決断ができなければ、日本は「自国を取り囲む現状の認識が甘い上に、自国の運命を自分で決められない国民である」というレッテルを諸外国から貼られても仕方がない。それでも本当に良いのだろうか。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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