秋晴れと思われていた日中間に突然暗雲が立ち込め、政治的な嵐に襲われる直前の様相を呈している。いうまでもないが、中国漁船と日本の海上保安庁の巡視船との接触事件がこの劇的変化をもたらした。
24日、那覇地検は国民への影響や日中関係などを考慮した上で、29日の拘置期限を前に処分保留のまま中国人船長を釈放した。これが日本国内の空気をさらに険悪なものにした。
「あしき前例を作った」といった声も上がったが、冷静に考えれば、日本側は非常に妥当な政治判断を下したと思う。実際、米国も、日本が中国人船長を釈放したことを「正しい判断だった」「適切な決定」と評価し、日中間の「緊張が大幅に緩和されると信じている」と語った(広報担当のクローリー米国務次官補)。さらに、「成熟した国家同士が、外交を通じてどう問題を解決するかを示した」とまで評価された。
その意味では、日本国内のメディアや政治家の一部がどんなにセンセーショナルにこの問題を取り上げようと、日本政府が下したこの政治的判断に対する世界の評価は変わらない。
一方、それ以外の選択肢があるかどうかも考えてみよう。中国人船長をこのまま拘置、あるいは起訴したら、どういった結果になるのか。おそらく日中関係は修復不可能な状態に追い込まれてしまうだろう。
日本のGDPがアジア全体の60%を占めていた頃ならいざ知らず、日中関係をそこまで壊してしまったら、中国も大きく傷つくが、いまの日本はおそらく中国以上に苦しい立場に立たされてしまうだろうと思う。