インクジェットの可能性に賭け
事業の選択肢を増やす

 最近エプソンでは、強みであるインクジェットプリンタのライン拡充を進めている。

 1つは、「エプソンのスマートチャージ」と呼ぶインクジェット機でオフィスの複写機の領域を攻める戦略である。スマートチャージは、複写機メーカーが販売する複写機とほぼ同じ機能を備えるが、本体導入費用がゼロで、一定枚数(たとえばモノクロは2000枚、カラー600枚)まで定額(1万円)という、わかりやすいモデルである(契約年数5年の場合)。本体費用ゼロのため、SOHOでも導入しやすく、しかも保守サービスやインク代もすべて含まれているので、ユーザーが“手を汚す”必要もない。

 トナーは中に空気が入っているため容量が大きくなるが、インクは容積を小さくでき、これがインク全体の大容量化を可能にしている。対オフィス用には当面このモデルが中心となり、レーザープリンタや複写機の市場を攻めにいくと見られる。

 一方、新用途開拓としては、エプソンのインクジェットはインクを飛ばすだけであり、レーザーに比べて部品交換や故障が少なく、また多様なインクを飛ばすことができるという特長がある。

 そうした技術の優位性を生かして、水を使わずTシャツへの印刷ができたり、DMやチラシ、地図、オンデマンドの大型ポスターなどが作りやすかったりする。インクジェットをコア技術とするエプソンは、A4の紙に印刷するという以外の用途開発に力を注いでいる。

「豊かな社会とは、選択肢の多い社会である」――エプソンは、複数のビジネスモデルをユーザーに示すことによって、それを実現しようとしている。これまで教科書に書かれてきた「ジレットモデル」だけが、プリンタのビジネスモデルではないのである。