賃料は下落したとみられるが、不振のアバクロが負担に耐え続けられるか Photo by Satoru Okada

 東京の銀座6丁目、中央通りとみゆき通りの交差点の北側に、地上11階建てのビルがある。米国のアパレルブランド「アバクロンビー&フィッチ」の銀座店が入居している、茶色い外観の細長いビルのことだ。「週刊ダイヤモンド」の取材によると、このビルは、個人から米大手生命保険会社のプルデンシャル生命保険に売却されたもようだ。

 もっとも、このビルはかねて、アバクロの日本法人であるAHFJapan合同会社が、入居賃料が高すぎるとして、所有者だった男性を相手取って賃料減額訴訟を起こしていた。

 訴訟資料によると、売却前の賃料は坪あたり20万7963円。賃貸面積が約1900平方メートルなので、月額の賃料負担は、実に1億2000万円に上る。日本最高峰の商業地である銀座でも、商業施設の賃料は高くてもせいぜい坪あたり10万円といわれており、20万円は破格だった。

 この高額な賃料の理由はといえば、2007年にアバクロが当初の入札で敗れた後、この1億2000万円という破格の負担を再提示。その後、米国本社の幹部が自家用ジェットで来日し、いかに銀座に出店したいかを熱心にプレゼンテーションしたという。故に、被告の男性は減額を拒否していた。

 ところがこの訴訟は、アバクロ側が訴えを取り下げて、今年4月27日付で決着。そして、ビルの登記上の所有者は4月21日付けで、信託受託者である三菱UFJ信託銀行に変わっている。ビル所有者の変更によって賃料の引き下げが見込めるようになったため、アバクロが訴訟を取り下げたと推測される。