東京&大阪で高校授業料実質無償化 常識崩壊!高校入試最前線#5Photo by Hiroaki Miyahara

大阪府が2024年度から段階的に導入した高校授業料の“完全”無償化によって、府立高校が異常事態に陥っている。全日制145校のうち、名門校を含めた約半数の70校が定員割れしたのだ。高校授業料無償化は府立高校にどのような影響を与えるのか?府立トップ校の今後の戦略は?特集『東京&大阪で高校授業料無償化 常識崩壊!高校入試最前線』(全8回)の#5では、府立高校の最難関、北野高校の浅田充彦校長にインタビューした。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

地域2番手の人気高も定員割れに
「これまでの定員割れと異なる」

――大阪府立高校の2024年度入試では、全日制145校のうち、約半数に当たる70校が定員割れしました。この理由として、24年度から段階的に導入されている高校授業料の完全無償化が影響したと思われますか?

 大阪府独自の高校授業料の無償化政策は、今回で2回目です(編集部注:11年度から当時の橋下徹大阪府知事の下で導入された所得制限付きの高校授業料無償化制度)。このときも全く同じ現象が起き、多くの府立高が定員割れしたんですね。また、人口減少に苦しむ大阪南部の府立高ほど苦戦している点も同じです。

 ですが、これまでと今回が大きく異なるのは、学力レベルで地域2番手校などの人気と伝統があるはずの府立高でも定員割れするところが出てきた点です。これは多くの府立高関係者にとって大きなショックだったと思いますね。

浅田充彦・大阪府立北野高校校長あさだ・みつひこ/1961年生まれ。大阪市立大学(現大阪公立大学)文学部卒業。大阪府立玉川高校などで国語教諭として勤務。大阪府教育センター、大阪府教育委員会高等学校課を経て、泉陽高、摂津高、生野高で校長を歴任。2024年より現職。

――大阪府の条例によって、入学志願者数が3年連続で定員割れし、かつ改善の見込みがない府立高は統廃合の対象になりますが、これだけの学校数が定員割れになると……。

 そうですね。今回定員が割れた府立高の先生たちは、連続しての定員割れは避けたいでしょうから、中学生にアピールしようと必死です。7月30~31日に開催された「大阪府公立高校進学フェア」で各校のブースが設けられていましたが、あるブースの校長先生は「2年続けて定員割れさせるわけにはいかん」と言って、自らプレゼンテーションをもう声を枯らしながら、一日中やっておられました。

――大阪府立最難関の北野高校では、今後の魅力向上について、どのような戦略を立てていますか?