都立高校の最難関、日比谷高校が2024年度入試で5年ぶりに定員割れし、2次募集に踏み切った。その原因として挙げられるのが、東京都が24年度から導入した、私学を含めた高校授業料の実質無償化における所得制限の撤廃だ。高校授業料無償化は都立高校にどのような影響を与えるのか?都立トップ校の今後の戦略は?特集『東京&大阪で高校授業料無償化 常識崩壊!高校入試最前線』(全8回)の#1では、萩原聡・日比谷高校校長にインタビューした。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
私立高校の授業料無償化は
日比谷→開成への流出を後押しか
――2024年度の都立高校一般入試では、トップ校である日比谷高校の合格者268人中18人が辞退したために入学手続き者が定員(253人)に満たず、5年ぶりに2次募集(2人)をしたことが注目を集めました。その背景に、東京都が24年度から始めた、所得制限撤廃による高校授業料の実質無償化の影響を挙げる声がありますが、どう見られていますか?
2次募集に至った直接的な要因は、本校の受検者数が前年度に比べて大きく減った(編集部注:23年度474人→24年度354人)ため、合格者数も若干減らした(編集部注:23年度273人→24年度268人)ことにあり、例年通りの合格者数を出していれば2次募集はなかったとみています。
ただし、合格者のどの学力層が入学を辞退しているのかといえば、筑駒(筑波大学附属駒場)などの国立大学付属高や開成をはじめとするトップ私立高に合格している上位層と思われます。その意味で、今年度から始まった都の高校授業料の実質無償化は、校舎の建て替えで設備の充実を図る開成などトップ私立高への選択を少なからず後押ししたのではないでしょうか。
――授業料実質無償化が打ち出されたのは昨年12月だったため、その影響は25年度入試以降により強く出ると塾関係者などはみています。
次ページでは、25年度以降の高校入試で、授業料無償化の影響が直撃しそうな都立高校に加え、日比谷高校の戦略を明らかにする。