AIの台頭や一層のグローバル化、就活の地殻変動などの影響で到来する「仕事が消滅する時代」。本連載では、藤原和博氏の最新刊『10年後、君に仕事はあるのか?』の内容をもとに、「高校生に語りかける形式」で2020年代の近未来の姿や、未来を生き抜くための「雇われる力」の身につけ方などをお伝えしていく。今回は連載第8回目、テーマは「部活動の落とし穴」。

部活動の落とし穴「勉強以上の成長実感」があること

楽しいことだけをやっていても成長できない

 僕は部活容認派です。

 盛んなほうがいいと思っています。むしろ、学校教育における部活は、2030年代になって、たとえ通常の教科授業のすべてがオンライン学習に替わったとしても、まだリアルな体験として残るんじゃあないかとさえ思います。教員の意思とエネルギーが続けばの話ではありますが。

 ただし、ちょっとした落とし穴もあるので、ここで注意を促しておきましょう。

 じつを言うと部活には、授業以上に日々の成長実感があるんですね。やったらやっただけ伸びる感じがつかみやすい。同じ時間をかけた場合、勉強で国語力が伸びたり、数学力が伸びたりするより、この実感が強いかもしれない。

 ここはちょっと怖いところなんですね。なぜなら、成長実感が強いほうに人間はエネルギーを傾けがちですから。部活にシフトしすぎて苦しみながらも楽しんじゃってるうちに、高校生活が3年目になっても、自分で学習するスタイルを作れなかったということが起こる。勉強そっちのけになっちゃうってことです。

 文武両道とか、勉強と部活の両立という言葉は、掛け声として言うのは簡単です。でも、実現には困難がともなう。簡単に言えば、勉強より部活のほうが楽しいから。

 ここで強調しておきたいのは1点です。

 楽しいほうだけに行っちゃうと、人間は成長しないということ。なんとかして、両立の工夫を意地でも自分で編み出さなければならない。

 僕自身も中学は軟弱な剣道部だったものですから、高校から入部したバスケの激しい練習は体力が持たず、家に帰ってから眠くて宿題どころではありませんでした。そこで、帰ったらすぐに一旦寝てしまうことにしたのです。2時間仮眠して、21時頃から夕食を食べながらなんとか目を覚ますんです。その後、2~3時間勉強したり、ラジオを聴いたり、ギターを弾いてから寝るというパターン。

 これなら自分の時間もでき、時間管理のクセもつきます。

 最初は目覚ましで起きても眠くて眠くてしょうがなかったのですが、繰り返すうちに慣れました。慣れる前は目覚ましに気づかず、起きたら朝だったということも何度もあります。2時間以上寝ちゃったら、誰だってもう起きられないでしょう。15分の仮眠ですっきりする人もいるでしょうし、30分でOKという人もいます。

 自分独自のパターンを作るしかないんです。