「子どもに英語をマスターしてほしい!」――そんな願いを持っている親御さんは少なくないだろう。しかし、そんな人でも「英語がペラペラになればそれでいい」などとは思っていないはず……。むしろ、本当にわが子に身につけてほしいのは、世界のどこでも生きていける頭のよさ、つまり「本物の知性」なのではないだろうか。
実際、応用言語学や脳科学、教育心理学などのアカデミックな研究では「外国語学習の機会が、子どもの知力やIQを高める」といった知見が蓄積されつつあるという。
いま、こうした科学的根拠(エビデンス)に基づいた指導によって、子どもたちの英語力を着実に伸ばし、人気を集めている英語塾があるのをご存知だろうか。元イェール大学助教授の斉藤淳氏が代表をつとめるJ PREPだ。
本連載では、同氏の最新刊『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語――わが子の語学力のために親ができること全て!』から、一部抜粋して「ほんとうに頭がいい子」を育てるための英語学習メソッドを紹介する。

直近の大学入試でも「変化」は起きている

小学校英語と大学入試改革の話をしてきましたが、「うちの子はもう高校生だし、『英語』の新制度は関係ないのか……」という方のために、もう少し補足をしておきます。

「言葉はあくまでコミュニケーションの道具である」――これがSLAに通底する基本的な価値観です。つまり、言葉の習熟度を測るうえでは、文法が正確かどうかは評価軸の一つに過ぎません。発音がどれくらい滑らかか、伝えたいメッセージは明確かなどを含め、SLAでは多面的に言語習得のレベルを評価します(Skehan, 1998)。

ここで看過できないのは、こうしたSLA的な価値観が、すでに最近の大学入試にも持ち込まれつつあるということです。とくに難関大学では、総合力を問う入試が導入されています。ひと昔前のような、和訳・英訳を通して理解力の深さを確かめる問題は姿を消し、英語の運用能力、英語での分析力を直接確認する問題に取って代わられます。
たとえば、東京大学の2017年前期日程試験「英語」では、こんな問題が出題されて話題となりました。

「あなたがいま試験を受けているキャンパスに関して、気づいたことを一つ選び、それについて60~80語の英語で説明しなさい」

これが単に「英語力だけ」を問う設問でないことは明らかです。試験会場にやってくるまでの観察力や歴史的教養、それを論理的に(しかも英語で)簡潔な言葉にする力など、まさに総合的な知性が問われています