米イラン武力衝突本格化なら原油は75ドルへ、中国経済減速にも拍車米軍により殺害されたイラン革命防衛隊のコッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官の死を悼み、市中に繰り出すイランの人々 Photo:SOPA Images/gettyimages

米軍によるソレイマニ司令官殺害の報復として、イランはイラクの米軍基地を攻撃。原油価格は急騰、株価も下落した。米国がさらなる報復に出れば、本格的な武力衝突の恐れもある。その場合、原油価格は北海ブレントで1バレル=75ドル前後へと上昇するだろう。原油価格上昇は中国経済の減速に拍車を掛けることにもなる。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

 トランプ米大統領の軽率な決断が世界経済を混乱に陥れるかもしれない。イランは1月8日に、イラクのアサド米軍基地をミサイルで攻撃した。これは、3日に米軍の無人攻撃機によってバグダッド国際空港でイラン革命防衛隊のコッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官が殺害されたことへの報復だ。

 米国が司令官殺害に踏み切ったのは、昨年12月27日にイラクのキルクーク空軍基地が武装勢力の攻撃を受け、米国兵が1人死亡したためだ。米国はこの攻撃の背後にコッズ部隊がいると判断した。

 コッズ部隊は、米国でいうCIA(中央情報局)に該当する対外特殊活動を担当する軍事組織だ。トランプ大統領の指示の下、そのトップをいきなり殺害したのだから、イランもこぶしを振り上げざるを得ない。トランプ大統領の判断は軽卒の誹りを免れないだろう。

 イランは、報復の第1弾として米軍攻撃に先立つ5日、核合意を実質的に無効化するウランの無制限濃縮活動の再開を宣言していた。