新国立競技場と五輪シンボルマークPhoto by Satoru Okada

新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に広がる中、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委)は表向き、予定通りの今夏の開催を主張するスタンスを崩さない。ところがその裏で、大会が延期や中止となった場合に備えた検討を始めたことが分かった。開催の決定権は国際オリンピック委員会(IOC)にある。このため組織委はIOCの開催を巡る判断に備える形で、人員やコスト面で生じる問題を内部で具体化する作業に3月から着手した。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

「延期が現実的」の理事発言を森会長が火消し
それでも組織委内に広がる感染拡大への不安

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委)が、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、7月24日からの開催期間の延期、または大会そのものが中止となった場合の対応について、内部で検討を始めたことが3月12日、関係者への取材で分かった。

 組織委が検討を開始したのは3月以降。もちろん組織委は表向きには、予定通りの大会開催を主張している。組織委の高橋治之理事が11日、米「ウォール・ストリート・ジャーナル」などの取材に、「最も現実的な選択肢は開催を1、2年延期すること」との見解を表明すると、すぐさま森喜朗会長が同日に記者会見。「今、方向や計画を変えることは全く考えていない」と火消しする騒ぎとなった。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長も予定通り今夏の開催を主張している。

 メイン会場である新国立競技場は、当初の計画が白紙撤回されるなどすったもんだの揚げ句、昨年11月に完成した。その他の競技施設も完成に向けて急ピッチで工事が進んでいる。暑さ対策や、トライアスロンなどの会場となる東京・お台場の海水の腐敗臭といった未解決の問題もあるが、7月開催に向けて全力で準備が進められてきた。