8年前のある写真との出合い

日中マンガ文化の架け橋となるキーワードは「ハードからソフトへ」小籠包を蒸す娘(小林さん撮影、著者提供)

 8年前の2012年11月、ネットで偶然見た中国の若いカメラマンが撮影した一枚の写真に目を奪われた。南京市の白鷺洲市場で小籠包を蒸す娘さんを撮影したものだ。

「撮らないで。あたしはあまりきれいではないの」
「そんなことはない。とてもきれいだよ」

 若いカメラマンと若くて素朴な女性店員さんとの無邪気な会話も付いたこの写真に、庶民を見つめる撮影者の温かい目線を感じた。私のフェイスブックと中国のSNSである微博(ウェイボー)にアップして紹介したところ、案の定、多くのコメントをいただいた。その一部をここに引用させていただきたい。

「娘さんと撮影者の心の交流、二人の心の美しさが滲み出ています。『近年は、インスタ映えする派手な写真ばかりが持てはやされていて、写真を撮るという行為の意味が揺らいでいる』←フリーカメラマンをしている次女の嘆きです」

「土門拳や木村伊兵衛が、スーパー・リアリズム時代に日本で写し撮った生命力が持つ躍動感を、今の中国は持っているのですネ?!確かに輝いています」

「10代の吉永小百合さんが演じてた雰囲気ですね」

「撮影者の人柄・高い技量がしみじみ見えます。こういう写真を民間レベルで交換し続ける事で、仲良しでいられると確信します」
  
 写真を撮影したのは小林(しょうりん)という若いカメラマンだ。中国では、若い人を親しみを込めて呼ぶ場合には、その姓の前によく若いという意味の「小」をつけて呼ぶ習慣がある。微博では、広東省に住むこの小林さんとテキストのみで少し交流をしたが、今後の人生で接点はたぶんないだろうと思って、それ以上、深い交流はしなかった。