【きんざい特別転載】水素は脱炭素の切り札となるかPhoto:123RF

水素への期待

 水素は元素の中で最も軽く、無色・無臭の気体である。地球上に多く存在するが、単体(H2)としてではなく、酸素(O)と結び付いた水(H2O)の状態であることがほとんどだ。水素は今から約250年前、英国の化学者によって発見された。以来、気球や飛行船の浮揚用ガス、肥料の原料として用いられるアンモニアの合成、石油製品の精製や油脂の製造など、幅広く利用されてきた。

 そして今、脱炭素の潮流の中で、水素がカーボンニュートラル社会を実現するために不可欠なエネルギーとして脚光を浴びている。利用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない、化石燃料と比較して質量当たりの発熱量が多いといった特徴が評価されてのことだ。

 また、水素はさまざまな資源から多様な方法で製造でき、製造過程でCO2を排出させない手法もある。具体的には、水を電気分解して水素を取り出す過程で、再生可能エネルギー(再エネ)を電力として使う場合である。この手法で製造された水素は「グリーン水素」と呼ばれる。一方、天然ガスや石炭など化石燃料から製造し、製造時に発生したCO2を大気中に放出すると「グレー水素」、発生したCO2を回収・貯留すると「ブルー水素」と呼ばれる。現在、世界で製造されている水素の大半はグレー水素だが、カーボンニュートラルを実現するため、グリーン水素の普及を目指す動きが欧州を中心に活発となっている。