ある日突然、異動や転職などでリーダーを任された。
配属先は慣れ親しんだ場所ではなく、
すでに人間関係や風土、文化ができ上がっている
“アウェー”のコミュニティ(会社組織)。
右も左も分からない中、
「外から来た“よそ者”」の立場で、
いきなりリーダーを任されるケースも
少なくありません。
また、多数のエンジニアを率いる非エンジニアの
リーダーなど、自分の専門外の領域でチームを
まとめなければならない
「門外漢のリーダー」も増えています。
今の時代、「よそ者リーダー」がリーダーの
大半であるといっても過言ではありません。
そこで、新規事業立上げ、企業再生、事業承継の
中継ぎetc.10社の経営に関わった
『「よそ者リーダー」の教科書』の著者・吉野哲氏が
「よそ者」こそ身につけたい
マネジメントや組織運営のコツについて伝授します。
今回は、組織の実態がわかる「意外なチェックポイント」
についてお伝えします。
(構成/柳沢敬法、ダイヤモンド社・和田史子)

『「よそ者リーダー」の教科書』著者の吉野哲氏による、組織の実態がわかる「意外なチェックポイント」とはPhoto: Adobe Stock

「オフィスの四隅」は
会社の実態を映す

私は仕事をする会社を初訪問する際、最初にオフィスの「四隅」「共用スペース」「個々のデスクまわり」をチェックするようにしています。

なぜなら、その部分の整理整頓状態を見れば、ある程度はその組織(会社や部署)や従業員の仕事の力量を推し量ることができるからです。

人間誰しも、人目につくところは「きれいにしておこう」と思うもの。

問題は、人から見えないところです。

例えばオフィスの四隅のような外部の目に触れない場所に使わない資料や捨ててもいい備品が雑然と放置されていると、それだけで「ここでは見える範囲だけ整えて、問題点は裏に隠しておくような仕事をしているのでは」という印象につながりかねません。

また、散らかっていても誰も片付けようとしない「共用の作業スペース」からは、チームワークや一体感の欠如がにじみ出てしまいます。

こういうことは「一事が万事」。

雑然として乱れたオフィスは、そこで働く人たちの仕事への向き合い方の表れであり、ひいては責任者(リーダー)の力量の欠如の表れという見方もできてしまいます。

共用の作業スペース以外でも、オフィスなら「倉庫や資料室、給湯室など」、店舗なら「バックヤードや更衣室など」――。人目に触れない場所がどれだけ整理され、片付けられているか。会社の力量とは、実はそうしたところからも見て取れるのです。

さらに、社是や企業理念といった「社内の掲示物」もチェックポイントになります。

わかりやすい例が、企業理念が書かれたボードや額縁の掲示のされ方。つまり、「みんなが見えるところに、まっすぐ貼ってあるか」ということです。

理念やビジョンは、すべての従業員で共有するべき会社の目標であり、存在意義であり、社会的使命であり、経営姿勢です。本来は全従業員の目に触れる場所にきちんと掲示されていて然るべきものでしょう。それが、

「ああ確か、あの時計の横に貼ってありましたよ」
「ずっと貼ってあるから、紙の端がめくれて破けてる」

そのような状態になっていても誰も何も言わないし、直そうともしない。これもまたその会社の、ひいては経営トップの仕事に対する姿勢の表れだと、私は考えています。

「額縁ひとつで大げさな」という声もあるでしょう。

でも、それは違います。

経営トップの重要な役割のひとつが、従業員の目的や価値観のベクトルをそろえ、組織の一体化を醸成すること。ならば、そのベクトルの方向性を指し示す企業理念を常に共有できる環境を整えることも重要になるはずです。

全員で共有すべき目標を、全員が見えるところに掲げない。これは経営者の怠慢と言ってもいいほどに看過できない問題と捉えるべきでしょう。

いい仕事は、いい環境から生まれます。そして、その逆もまた然り。職場環境から、組織の風土やリーダーの力量が透けて見えてきます。

オフィスは、その会社の本質を映す“鏡”なのです。

※「よそ者リーダーとはどんな人か」「よそ者リーダーが身につけたい3つの心構えやマネジメントとは何か」については、本連載の初回記事も併せてご覧いただければと思います。

次回は、「よそ者リーダー」が味方にすべき社外の人についてお伝えします)