日本はなぜデジタル化が遅れているのか?写真はイメージです Photo:PeopleImages/gettyimages

国内におけるウェルビーイング研究の第一人者・前野隆司氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)と、「チームの生産性」と「メンバーの幸福感」の両立を実践する青野慶久氏(サイボウズ代表取締役社長)が、「企業の生産性向上になぜ『人間性の回復』が必要か?」をテーマに対談。全4回の第1回となる今回は、青野代表に「日本はなぜデジタル化が遅れているのか?」について語ってもらった。(聞き手/らしさ探究家 横川真依子、構成/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

ITが得意な人材は「IT企業」側にいるために
デジタル化を丸投げしてしまう

――おふたりはご面識があるとのことで、これまでさまざまなイベントの対談などでご一緒されてきたんですよね。

前野隆司氏(以下、前野) そうですね。もうだいぶ前に知り合いました。知り合う前から、「前野さんと青野さんは知り合うべきだ」と、多くの人に言われていたんです。それで最初にお会いして以来、何度もご一緒させていただいています。

青野慶久氏(以下、青野) 僕も前野先生に教えていただいた「幸せの4因子」(※人の幸せに影響する要素のうち、前野氏が掲げるおもな4つの要素)を、いろいろなところで話しています。

前野 ありがとうございます。

――今回、おふたりに、「テクノロジー」や「人間性」に関して、最近気になっているデータをお持ちいただいています。早速ですが、青野さんからご説明いただいてもよろしいでしょうか。

青野 わかりました。「日本がなぜテクノロジーについて、今、いけてないのか」というのを、こちらのデータで簡単にご説明させていただきます。

青野 「日本はデジタル化が遅れている」とよく言われますが、では、日本のIT人材はどこにいるのでしょうか? 見ての通り、日本のIT人材、ITが得意な人材というのは、「IT企業」側にいます。「ユーザー側」にいない。ところが、たとえばアメリカであれば、IT人材の多くはIT企業側ではなく、ユーザー側にいるんですね。ここがすごく大きな特徴になります。

 このことが何に影響するかというと、日本の場合はITに詳しい人が社内にいないので、デジタル化を進めようと思っても、結局、よくわからないわけです。よくわからないので、丸投げしてしまう。ところがアメリカなどの国では、社内に詳しい人が大勢いるので、「この製品よりあっちの製品がいいよね」とか「これは入れ替えよう」といった形で、自分たちの手でデジタル化が進んでいく。ここに大きな差が生まれてしまっています。

 ではなぜ、日本の企業はIT人材を採用しようとしないのか?