小中高一貫教育校としての工夫
3つ目の特色は「学びを実践する学校行事」であり、これも12年間をフルに生かすような設計がなされている。小学校段階の早くから通称“東京都英語村”の体験型英語学習施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」(江東区青海)を訪れ、西多摩や島しょ部での宿泊体験をするなど都立校らしさを出す一方で、海外姉妹校訪問(小6)、高校段階では海外調査研究、海外研修旅行と、在学中に3回の海外体験が盛り込まれている。学校行事にかかる費用は保護者負担となるものの、これだけの教育内容を公立校の授業料を基本に受けられるのであれば人気化することは必至である。
2022年度入学した80人については、2027年度には中学校段階への進学者が決定するが、本人と保護者との面談を行い、全員が進学できるよう人数の枠が確保されている。そこで新たに募集された80人が加わり、現状の立川国際中等教育学校と同じ1学年160人となる。その意味で、完全小中高一貫校というわけではない。
中学段階での募集をやめて12年間を4・4・4区分に切り替えた学校としては聖心女子学院(小5段階での編入学あり)の例などがある。思春期に差し掛かる子どもの発達段階を考えると、この区切りの方が理にかなっているからだ。
この点、都立の小中高一貫校では、8・2・2区分を教育の節目としている。これは、中学校段階から加わる半分の生徒を融合させるための対策だろう。英語能力にはかなりの差が見込まれるため、習熟度別クラス編成は不可欠となる。
12年間の後半で新しい血を入れることには、多様性を確保し、人間関係の固定化を防ぐという目的もありそうだ。前年の広島県呉市での動きに続き、2006年には品川区で小中一貫校「日野学園」を開校した。これを推進した当時の区長の構想には、この先に都立高校も接続した小中高一貫校のアイデアもあったようなのだが、この年の夏に急逝してしまう。跡を継いだ区長は小中一貫校を区内にその後6校まで増やした。
中1ギャップの解消を掲げるものの、小中9年間の人間関係の固定化により、いじめなどの構造がそのまま持ち込まれてしまう点が小中一貫校の負の側面として指摘されている。長い歴史を経ている国立大附属の小中高で、全員をそのまま連絡進学させず新しい生徒を入学させる理由の一つにもなっているのだろう。