「独立したい」という
40後半~50前半の友人は安易か?

40代~50前半で人生の岐路に立った時、独立という道を選んでも良いのはどんな人でしょうか?

 ここ最近、友人から相談を受けることが多くなった。

「そろそろ会社を辞めて独立しようと思うんだけど」

「おや、社長を目指してたんじゃなかったの?」

「ライバルの事業部門のほうが圧倒的に優勢で、当分うちの部門の出身者は日の目を見そうにないわ。いっそのことスパッと辞めて独立し、複数の新興ベンチャーの技術顧問でもやろうかと思うんだけども。お前、こういうのは詳しいだろ」

「まあ、ずっと支援してきたから詳しいことは詳しいけど、技術顧問 “でも” やろうか、といった安易な気持ちだとだいたい失敗するよ」

 40代後半~50代前半の世代は、会社でのキャリアの天井がほぼ見えてきている。いまだにトップランナーとして頂上を目指している人もいるが、そろそろ会社に依存せず、自分がこれまで培ってきた能力と自分の名前で社会とわたりあう生き方をしてみたい、と思う人も一定数いる。

 ただ彼らの多くは、ベンチャービジネスを起こし、資金を調達し社員をたくさん雇って会社を大きくするといった事業家マインドの持ち主ではない。原則的に一人で、自分の持つ専門能力や問題解決技術を複数の企業に提供する事業のあり方を志向している。弁護士や税理士などの士業に近い。こういう働き方をする人を“インディペンデント・コントラクター”と呼ぶが、私はかつてこの働き方を選ぶ人たちの活動を支援するNPOを設立したこともある(現在も3代目の理事長のもと積極的に活動している)。

 これらの経験を踏まえ、それなりにキャリアのある人が会社を辞めて独立したら、どんな風になっていくのかのリアルな状況を描写してみたいと思う。

ひとりで働く方法には5つのパターンがある

 会社を辞めてひとりで仕事をする人はたくさんいるが、良く見ると、5つのタイプに分かれる。まずは下記の図を見てほしい。

 縦の軸は、企業から依頼される業務の範囲の広さに基づく分類である。多面的とは、多様な業務をその顧客と一緒に長時間にわたり行うという意味である。その典型こそが“社員”なのだが、独立していてもこれに相当する人がいる。たとえば、顧客のオフィスに席があり、そこで長い時間を過ごす“常駐”なのに“社員じゃない”人だ。一方、限定された業務の範囲だけを担当し、仕事の打ち合わせのときだけ会議室で会う、またはメールでやり取りするだけで仕事を済ますといった関係は、局面的な関係となる。

 横軸は、顧客との相対的な力関係である。当人が持っている知識やノウハウ、人脈などが、その企業から見て魅力的な場合は、相対的にみて個人が強い立場にある。逆に他者によって代替可能であり、またその他者が容易に見つかるような状況にあれば、弱い状況にある。たとえばビッグデータを縦横無尽に分析し、顧客の購買行動の法則を見つけ出すことのできるような人ならば、現在需要に比べ圧倒的に供給が足りないから、顧客に対して相対的に強い立場に立つ。監督官庁に顔が利くというのは大きな価値だが、同様の人がその場所にたくさんいれば相対的な力は弱いものとなる。