【久賀谷】それはすべての現代人が抱えている問題だと思います。実際、その匙加減はいちばん難しいところです。ゆとりを持ちつつ、ちゃんとやることはやるという。ゆとりがない人って、本質、つまりその人にとっていちばん大切なことを見失ってしまうんです。
『最高の休息法』の中でも紹介した論文ですが、牧師になりたい学生を対象にした実験があります。移動時間中に「困っている人に遭遇する」とハプニングを仕込むのですが、「時間の余裕がない」と思っている学生グループのほうは、困っている人を助けなかったんですね。人を助けたくて牧師を目指しているはずなのに、その「本質」を見失ってしまう。これは私たちの身の回りでもよくある光景かもしれません。
【中西】僕も効率を優先してきたあまり、昔はテレビやラジオでも「自分はこう思う」ということを伝えることばかり考えて、相手がどう受け取るかを疎かにしていたかもしれません。ただここ数年は、自分の意見を言う前に、ひと呼吸をおいて「テレビやラジオの視聴者にどうしたら話を聞いてもらえるか」を考えるようにしていたんです。
そんな折に久賀谷さんの本に出合って、「ああ、『信号待ちは儲けもの』という考え方も必要だよな。自分にも相手にも余裕がないと、自分は本質を見失うし、相手は話を聞くキャパシティがなくなる」と腑に落ちました。
【久賀谷】中西さんは、著者の私が予測していた以上に、本の内容をご自身なりの視点で深く解釈して、しかも実際の行動に移されている。そこが本当にすごいと思います。感服します。
マインドフルネスってある程度の「やり方」はあるものの、じつは「正解」ってないんです。「このやり方であっていますか?」と聞かれることもありますが、「こうじゃなきゃいけない」というものもないんです。
むしろ「こうじゃなきゃいけない」という呪縛、いわゆるジャッジメンタルなスタンスを避けるべきだというのがマインドフルネスの根本的な考え方ですからね。その意味で、「自分なりのやり方」を見つけることって、とても大事なんです。中西さんは本を読んだうえで、マインドフルネスをご自身の中に落とし込まれているので、吸収が早いんですね。
(次回、最終回!!)