“明確なフィードバックがないと、その時点で
最もたやすい行動をとってしまう”問題
だが、クライアントを失うことはなく、メンバーが職を失うこともなかった。それどころか、コンサルタントたちは仕事をより楽しむようになり、チーム内のコミュニケーションもスムーズになり、より多くのことを知るようになり、そしておそらく最も重要なことだが、「クライアントによりよいものを提供する」ようになった。
このことから興味深い疑問が生まれる。なぜそれほど多くの人が、接続性の文化を助長するのか?パーローの調査で判明したように、接続性の文化は従業員の福利と生産性を損ない、おそらく純利益を高めることにもならないと思われるのに?それは、次のような職場習慣のせいではないだろうか。
最小抵抗の原則:ビジネスシーンでは、さまざまな行動の純利益への影響に関し、明確なフィードバックがなければ、その時点で最もたやすい行動を取りがちである。
この原則によれば、先の疑問の答えは、「それが最もたやすいから」ということになる。これが正しいといえる大きな理由が、少なくとも二つある。第一は、あなたのニーズへの応答に関係する。あなたが疑問の答えや特定の情報が必要なときすぐ入手できる環境で働いていたら、生活はよりたやすくなる――少なくともその時点では。
そんな迅速な応答が当てにできなければ、事前に計画を立てたり、もっと組織立ったやり方を取ったり、あなたが要求したものを待つ間、仕事を一時脇へ置いて、他のことに注意を向けたりしなければならない。このすべてが毎日の職場生活をより困難にするだろう。
インスタント・メッセージの台頭は、このマインドセットが極度に押し進められたものとみなすことができる。もし1時間以内にメールの返事が届けば仕事をやりやすい1日になるのなら、インスタント・メッセージによって1分足らずで届けばもっとよくなるわけだ。
接続性の文化が生活をたやすくする第二の理由は、それによって受信ボックスで日々が成り立っているような環境がつくられるからだ――他のことを棚上げにして、最新のメールに機敏に応答し、その間ずっと成果が上がっているように感じて。もしメールが後回しになれば、あなたは何に、どのくらいの時間、取り組むべきかを明らかにする方策を取らねばならなくなるだろう。そんな計画を立てることは難しい。
ディープ・ワークとは正反対のビジネス行動の一例を挙げたが、企業が生み出す純利益を低減させるにもかかわらず、なお盛んにおこなわれている。それによる損害を計量することができないがために、よりたやすいものに頼っているからだ。しかし、私たちは常に存在し、常に悩ましい「生産性」への要求をも考えねばならない。次にこのテーマに注目しよう。