初対面では好人物だが…
研究所を壊した新任所長
先日、ある外資系企業の研究所に勤める男性から興味深い話を伺った。その男性(Aさん)はその研究所の1プロジェクトを任されている主任研究員で、さらに所内に配属された、若手研究員の育成プログラムの責任者でもある。
彼の仕事は、自分のプロジェクトの研究の他、若手研究員育成のためのプログラムを開発し、実行することだ。
さらに、若手の創造性を伸ばすために、プロジェクトとは別の小規模個人プロジェクトを立ち上げさせ、そのための研究費支援も行っている。そのプロジェクトが順当に行われているか、研究費の使い方は適切か、などもAさんはチェックする立場にある。
そのプログラムは若手研究者には好評で、特に他社から転職してきた若手からは「これだけサポートしてもらえるのは嬉しい」とのコメントをもらうことが多かった。当然のことながら、これらの遂行には、それなりの予算が必要で、研究所ではそれらの遂行に必要十分なだけの予算を確保していたのだが…。
一昨年からその研究所に、新しい所長が赴任した。外国人で、同業の別会社の研究所から引き抜かれて抜擢された人事だった。研究業績もある人なので、官僚的にならず、研究者の立場で物事を考えてくれる人物だろうと皆が期待していた。
Aさんも、赴任直後の新所長に会ったところ、物腰のやわらかい、人の好さそうな人といった印象だった。
だが、それから2年。Aさんによると、いま研究所は機能不全直前だという。一体何が起こったのか。