出資者を納得させた「失敗前提」の戦略とは?

 事業の立ち上げにあたっては、あるインキュベーションの会社から出資を受けました。

 そこで私が出資者に約束したのは、「1年後の2016年6月には必ず単月黒字にします」ということ。つまり、めざすゴールを設定したわけです。

 ただし、こうも付け加えました。

「その代わり、最初は高いコストをかけて、集客のためのプロモーションをすべて試します。そのため一時的には顧客1人当たりの獲得コストが高くなりますが、試した方法の中からいいものを選んで、1年後には目標値に収めます」

 その宣言通り、私はあらゆる集客方法を試しました。

 WEB広告やFacebook広告はもちろん、タクシーに広告を出したり、チラシを配ったりもしました。

 インターネット広告代理店は4社使いました。

 代理店を複数使ったのは、運用能力に差があるからです。同じWEB広告でも、テキストの書き方やサイトへの誘導の仕方は代理店によって異なります。

 会社の規模や売上が大きくても、誤発注やミスが多いこともあるし、同じ代理店の中でもスキルが低い担当者なら成果が出ないこともあります。

 こればかりは、やってみないとわからないのです。

 あるとき、新規の入会と無料カウンセリングの申し込みが、10日間ほどピタッと止まった時期がありました。

 そこで原因を探ったところ、今月も前月もオーディエンスネットワークという手法の広告を出した期間に申し込みがゼロになっていたのです。

 もちろん、すぐにその広告はストップをかけました。

 代理店からは、「多数のターゲット層に安価で接触できる非常にコスト効率の高い広告です」と説明されていましたし、出稿後のインプレッション(広告が表示される回数)も好調でした。だから「たくさんの人に見てもらっているから、申し込み数も増えるだろう」と期待していたのですが、現実は逆だったわけです。

 他の事業でなら、この広告が効果を発揮するケースもあるでしょう。

 ただ、このビジネスにはマッチしなかったということ。世間一般で良いとされていても、自分の仕事で結果が出るとは限らないのだと改めて実感しました。

 こうして広告のチャネルごとに効果とコストを測定しながら、私は事業の改善を続けました。