夏が来る前に、
始めなければ間に合わない

 もうひとつ、実施するには「今から始めなければ間に合わない」ということだ。

 夏が来る前の4~6月、エアコンが要らず過ごしやすいこの季節は、計画停電の必要がなくなる。

実際に東京電力は電力の需給バランスが改善を見せているとして、4月8日に「今後は計画停電を原則実施しない」と発表、そのまま現在に至っている。

  だが怖いのは、これで「もう大丈夫」と安心してしまうこと。計画停電の不安を忘れてしまうことだ。
今(4月後半)の季節は陽気がいい。エアコン使用がないから電力需要が少ないだけで、夏になって一斉に冷房を使うと、冬場以上に電力が不足するのは目に見えている。

計画停電がない今こそ、来るべき夏に向けての準備をしておくべきなのだ。国は今まで以上に節電対策への取り組みを呼びかけなければならない。

 国が政令をつくるのも、企業が就業規則を改定するのも、エアコンを買い替えるのも、2日や3日でできることではない。寒くも暑くもない今、始めなければ手遅れになる。夏が来てからあわてて始めても遅いのだ。

この夏をどう乗り切るか。
国が、企業が、日本が試される

 4月21日、政府は今夏の電力不足対策として打ち出していた使用電力の削減目標を、企業、家庭ともに一律、前年比15%減程度に緩和する方針を固めたと報じられた。

 これは東日本大震災で運転休止中だった火力発電所の復旧などで夏の電力供給力がなんとかまかなえる目処がついたからだという。

 しかし安心するなかれ。

 いまだ続いている余震の影響で、火力発電所の復旧に遅れが出るかもしれない。老朽化した火力発電所に〝想定外の〟トラブルが発生しないと、誰が断言できよう。

 計画停電の可能性がなくなったわけではないのだ。

 私たちにまず求められるのは、電力不足の恐れがあることを認識すること。そのために節電意識を持ち続けることだ。それも「正しい節電」「ピーク時の抑制」という考え方だ。

 今こそ官民がみんなでひとつになって、来るべき夏にできる限りの備えをしたい。

 この夏、そして今後の、日本の国や企業の底力が、試されている。