彼女が日本情報をよく知っているのは日本に関する情報だけを紹介するSNSのサイトを常にチェックしているからだ。そこで日本の最新ファッション、新規オープンの専門店やカフェ、トレンドの情報を得る。さらに日本に行った友だちや日本在住の中国人からの生情報をプラスして、自分の仕事のスケジュールをやりくりした上で来日する。だから、春節と国慶節の大型連休はまったく関係がない。「春節は仕事が休みなので、家族で静かに過ごす大事な時間」だし、「国慶節は自分の店の書き入れ時で忙しい」からだ。

バーゲンセール初日や
お花見を狙って来日

 では、そんな流行に敏感で先端を行く彼女たち中国のアラサーは、具体的にはいつ日本にやってくるのか?

 一つは日本の百貨店や専門店のバーゲンセールの時期だ。夏物のセールなら7月。冬物のセールなら1月。とくに有名百貨店の特定のブランドのセールは日本在住の中国人の友人や店から直接連絡をしてもらい、セール初日をめがけて来日する。

 以前、拙著『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』の執筆のために取材した伊勢丹の担当者は「中国のお客様は最初から日本の百貨店にやってくる"明確な動機"を持っていて、欧米ブランドよりも日本ブランドに興味があります。それに、日本人もまだあまり知らないような新進気鋭のクリエーターズ・ブランドも買っています。各百貨店やブランドのセール時期も熟知していますね」と話していた。

 ふだんからファッション専門のサイトなどをチェックし、品番まで調べ上げていて“指名買い”もする。バーゲン時期だけでなく、3ヵ月に1回、定期的に新作を買いにやってくる常連客もいるというから、おのぼりさんで混雑する大型連休はむしろ避ける傾向にあるのは当然だ。セールの行列に並んでいるのが「中国人」だとわからないのは、彼らの外見や雰囲気が日本人とまったく見分けがつかないからであり、単独行動か、あるいは多くても2~3人だけで静かに行動しているからだ。

 次に増えているのは、日本ならではの季節を楽しめる時期。たとえば3月末~4月上旬のお花見だ。桜のシーズンに大勢の中国人が観光にやってくることは今や珍しくないが、意外と増えているのは2月に静岡県で見ごろを迎える河津桜のお花見。

 日本人でも関東地方の人にしか馴染みがない早咲きの桜だが、流行に敏感な中国人の中にはすでに河津桜の存在を知り、わざわざこの時期にぶつけて来日するという“お花見マニア”もいるほどだ。「普通の団体観光客がするお花見よりも“ワンランク上”のお花見を静かに楽しんでみたい」(前述の杭州在住の女性)のだという。

 上海在住の別の女性の友人は「たまたまネットで尾瀬の水芭蕉の花を見ました。水がきれいな日本だからこそ、あんなにきれいな花が咲くのですね。開花時期が短いから、ぜひ日程を合わせて見に行ってみたいですね。水芭蕉を観賞しながらハイキングをするのも楽しそう」と話していたが、まさに「日本のこの時期にしかない○○を見たいから」とピンポイントでわざわざ日程を組む成熟層も増えている。