ほんのり甘いクッキーに、カリッとした塩味のあられが交じった不思議な食感。羊羹は程よい甘さで、私が手にしたものは、ほんのり桜の香りがした。素直に、おいしいと感じた。

「自家製の餡は手間がかかるから無理、と言った人が、ここまでやってくれたか」。そう感動していたところに、もう1つ試作品が配られた。色とりどりの小さなクッキーだった。

特産品を練り込んだ、色とりどりの「へんろの小石」

「さぬき特産のイチゴ、桑の葉、和三盆の三種類です。『へんろの小石』と呼んでください。独特の食感を味わってもらいたいです」

 にっこり笑って、リーダー役の洋菓子職人が説明した。あの紛糾した初会合で、「面倒な議論をさせるな」「答えを示せ」と吼えた人である…。

 桑の葉を練り込んだ緑色の粒を噛むと、口の中でホロリと崩れた。ほろ苦い抹茶のような味で、おいしい。東京で評判の洋菓子屋にあってもおかしくない、と思った。

やれば、できたじゃないですか

「拝みもなか」「へんろの小石」は、満場一致で商品化が決定。あの厳しかった十河商工会長も破顔一笑、みんなの労をねぎらった。

「前回とは見違えるような作品が出てきて、本当に感動しています。自分たちで考え抜いて、新しいものを生み出す。やれば、できたじゃないですか。よくぞ、ついてきてくれました」

 メンバー全員、まるで自分が褒められたように満面の笑みを浮かべている。お遍路を回りながら祈り続けたチーム結束の願いが、いま、目の前で叶いつつあった。

(本連載は毎週月曜日に掲載します。次回は6月20日です)