ひょんなことから香川県さぬき市の町おこしを手伝うことになった著者。しかし、ヒト・モノ・カネ・やる気・当事者意識のすべてが足りない「地方の現実」に直面。顔合わせの初会合は袋叩きで終わった。
そして迎えた第1回試作品検討会であまりの出来の悪さに十河商工会会長に一喝され、メンバーは本腰を入れ直して試作品づくりに再挑戦することに。
一方、筆者もお遍路で「みんなのためになること」に思いを致し、協力できることは何かを考え始めていた。
菓子事業者たちは、暗中模索していた。始めはそれぞれに試作品作りを続けていたが、どうにもブレークスルーが見つからない。そこで十河会長は、こうアドバイスした。「ひとりで悩んでても始まらん。助け合ってやったらええやろ」
そうして、7人の菓子事業者は、2・2・3の3グループに分かれて協力しあうことになった。実は、菓子職人にとってお菓子作りの技術やレシピはマル秘中のマル秘であり、同じ地域に住んでいても、会話を交わしたことすらなかったのだ。初めての共同作業は、ぎこちないながらも、少しずつ進んでいった。
(撮影:すべて岩城文雄)
とはいえ、次の試作品検討会まで、あと2ヵ月半しかない。何か役に立てることはないかと考えた私は、ブランド・マネジャー認定協会の理事を務め、その知識の豊富さから「菓子職人よりお菓子に詳しい」とも言われる、小野ゆうこ氏をアドバイザーに招くことにした。
味や見た目はもちろんのこと、お土産として買って渡した時に相手に喜んでもらえるかなど、小野氏のアドバイスは詳細かつ手厳しかった。しかし、菓子事業者たちはみな貪欲に食らいつき、試行錯誤に明け暮れた。
いよいよリベンジの日
そしていよいよ、成果を発表する日が来た。前回同様、20名のメンバーが商工会会議室に集まった。
最初の発表者は、素朴な菓子作りが得意な、この道40年超の和菓子屋店主だ。
「お遍路さんの数珠をイメージして、焼まんじゅうを輪っかにしてみました。中身は、白餡に地元でよく食べるしょうゆ豆を混ぜています」
見ると、直径30センチはある巨大なお菓子だ。みんなの目の前で切り分けられ、配られた。