数珠の形、さぬきならではのしょうゆ豆、甘さと塩味が絶妙な餡など、随所に工夫の跡が感じられた。
同じ人が作ったお菓子とは思えない…
「白餡としょうゆ豆の塩味、なかなか合いますね」「しょうゆ豆、県外では珍しいでしょうな」。みな口々に感想を述べ、細部の出来を確かめている。前回の試食会とは、明らかにムードが違った。
「これが前回、何の変哲もない蒸しまんじゅうを持ってきた、あの人の作品か」。予想をはるかに上回る進歩に、思わず私も顔がほころんだ。
後からプロジェクトに参加した跡取り息子さんによると、「何十年も前に買った本を引っ張り出して、夜な夜な新商品づくりに励んでいた」とのこと。とうとう本気になってくれたのである。
その後も、パイ、ダックワーズ(メレンゲを使った焼き菓子)、最中など工夫が施されたお菓子が次々と登場。どれも相当な出来映えだった。それぞれの発表に耳を傾け、じっくり味わい、意見を出し合った。
そしてついに、最後の発表者となった。洋菓子職人2人と和菓子職人1人、若手3人の合作だ。
2枚の煎餅のようなものと、アルミカップに入った薄切りの羊羹が配られた。
「クッキーにあられをまぶした2枚の皮で、羊羹をはさんで食べます。羊羹の味は、さぬき特産の桑、桜、小豆の3種。お遍路さんがお祈りをする時の手をイメージした『拝みもなか』です」