久賀谷 亮(くがや・あきら)
医師(日・米医師免許)/医学博士(PhD/MD)。イェール大学医学部精神神経科卒業。日本で臨床および精神薬理の研究に取り組んだあと、イェール大学で先端脳科学研究に携わり、臨床医としてアメリカ屈指の精神医療の現場に8年間にわたり従事する。現在、ロサンゼルスにて「TransHope Medical」院長として、マインドフルネス認知療法やTMS磁気治療など、最先端の治療を取り入れた診療を展開中。臨床医として日米で25年以上のキャリアを持つ。趣味はトライアスロン。著書に『世界のエリートがやっている最高の休息法』『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』(ダイヤモンド社)がある。

興味深いのは、腸内細菌叢を整えると脳にプラスの効果があるという説です*03。

腸などの消化器系と脳との関係はいままさに研究が進みつつある分野で、年老いたネズミの腸内細菌を若いネズミに移植したところ、若いネズミの老化が加速したという報告もあります。腸内細菌叢を整えるうえで有効なのが、納豆やヨーグルトなどの発酵食品です。

マインドフルネスはダイエットにも効く

食生活の結果としての肥満やいわゆるメタボも、脳にはよくないことがわかっています。肥満はうつ病の温床であり、同時にうつ病の結果でもあることが知られています。ストレスや怒りから来る「衝動食い」などは、当然これに関係してきます。

ここからわかるとおり、「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も大きなカギを握っています。マインドフルネスは、「食べたい」という衝動的な欲求を抑制するうえでも効果的で、20以上の研究のメタ解析によると、80%以上の研究で過食や感情的な食行動が改善していました*04。

さまざまなデータが蓄積され、ダイエットの方法としても導入されつつあります。脳という根本的な部分から食行動を改善するので、体重、血糖値、内臓性脂肪、メタボ・肥満のリスクなどを減らす効果も見込めます。

具体的には、食べるという行為に注意を向ける「食事瞑想」があります。食事瞑想の代表的なものが「レーズンエクササイズ」です。

そのほか、「ボディスキャン」「食事日記をつける」、さらには食べたいという「衝動」(「クレーヴィング」といいます)に注意を向け、それによって身体に起こる変化を意識する「RAIN」が効果的だとする報告があります。

RAINとは「Recognize(認識する)」「Accept(受け入れる)」「Investigate(検証する)」「Non-Identification(距離を取る)」の4ステップからなるマインドフルネスの方法です。

*03 Dash, Sarah, et al. (2015) “The gut microbiome and diet in psychiatry: focus on depression.” Current Opinion in Psychiatry 28.1: 1-6.
*04 ,Reilly, Gillian A., et al. (2014) “Mindfulness - based interventions for obesity - related eating behaviours: a literature review.” Obesity Reviews 15.6: 453-461.