日本でも世界でも「命をつなぐ」現場スタッフの一生懸命さに……
本庄 はい、正直、やはり大きな違いは感じました。高校生で一時帰国したとき、ネットで探して泊まり込みのボランティアに行ったのが、私営の小さな施設でした。規模的にも運営面からも仕方がないのですが、犬が入っているケージは狭い、設備がない、など、とにかくないないづくしというか……。だからこそ、少しでもよくなるように何かやっていきたいなと思いました。
著述家・編集者 1961年、金沢市生まれ。著書には、映画化された『盲導犬クイールの一生』『2択思考』、“分類王”の『図解でユカイ』他、『エア新書』『短編集 犬がいたから』『どうして? ~犬を愛するすべての人へ』など幅広いジャンルで多数。近刊著書は『分類脳で地アタマが良くなる』。プロデュース・編集した書籍も、ベストセラー『ジワジワ来る○○』(片岡K)、『ナガオカケンメイの考え』(ナガオカケンメイ)、『負け美女』(犬山紙子)、『ネコの吸い方』(坂本美雨)、『犬と、いのち』(渡辺眞子) 『マン盆栽の超情景』(パラダイス山元)など200冊以上。■ブログ http://www.blueorange.co.jp/blog/
石黒 いまは、公営の施設など、かなりよくなってきていますが、10年以上前で、しかもその規模だと……。
本庄 現場の方々は本当に一生懸命で、動物の世話も運営もがんばっているんですが……。それは今、日本も他国でもどこを訪ねても痛切に感じることですね。社会構造や、一般の方の意識の高さなど、課題は山積みですが、とにかく、現場のみなさんの熱意はすごいので、研究者としてというよりも、ライフワークとして伝えていきたいです。
石黒 それについては僕もまったく同じことを思います。過去に2冊、動物保護問題についての本を手がけていて。最初は2006年に出した『どうして? 犬を愛するすべての人へ』。捨てられた犬から届いた手紙というスタイルの原作がある絵本で、構成と文章を。その後、2010年には、動物保護活動を続ける渡辺眞子さんの本、『犬と、いのち』をプロデュース・編集しました。そんな流れやつながりもあって、公私両面で、保健所へ行って、現場の方に話しを聞くと、思いにぐっとくるしさまざまなことを考えさせられます。
本庄 毎日毎日、命をつなぐために、殺処分という現実にも向き合っているのですから、本当に頭が下がります。
石黒 保健所の職員の方は、動物が好きで救いたいから獣医師になったのに……。
本庄 犬や猫を捨てる人などの受け皿になっているのですから……。
石黒 『犬と、いのち』を作った2006年のデータでは、犬と猫合わせての殺処分が年間20万頭となっていましたが、いまは、7~8万と聞きます。ずいぶんと減りましたよね。
本庄 まさにそうですね。本にも書いたのですが、施設にしても、京都の保健所の例で言うと、私が大学生の頃に訪ねたときとは、見違えるようにきれいで立派になったとか。職員の方の取り組みとしても、熊本の保健所では、ペットを持ち込んでくる人に対して、職員の方が地道に説得を続けて、殺処分ゼロへの努力を続けているなど、どんどん状況は向上しています。でも動物保護問題は海外とも共通する部分が多いので、他国と学び合えることはたくさんあると感じています。