イギリスでは200年前に動物保護の法律が生まれた!

石黒 動物福祉といってもさまざまな分野と関わっていく、総合的な見地が必要になってきますね。それらを学んで、また日本に戻って今度は、一橋大学大学院に行っているのは、掘り下げていきたい場があったからですか?

本庄 日本ではまだ、動物法というカテゴリーが学問分野として成立しているわけではないのです。法学部ではなく理系の大学として、獣医学部では動物法を教えていたりはするのですが。私がいま通っている研究室の青木人志先生は、動物法に関する本を出されたりしていて、そんなところからです。

石黒 そうか、名称としてはまだダイレクト動物法ではないわけですね。何という専攻になるんですか?

本庄 法学研究科の比較法専攻となってます。私は動物に関して研究していますが、人によっては、たとえば、食品の表示方法だったりテーマはいろいろなのです。

石黒 それを聞くと、本庄さんの研究テーマが、現在の日本ではかなり絞り込まれた、ニッチな分野だということがわかりますね。

本庄 アメリカで言えば、動物法を教えているロースクールが、100校以上もあるんです。ヨーロッパでも少しずつ増えています。

石黒 動物保護先進国というイメージですね。僕が関わり深いフィールドである盲導犬の世界でもその状況は近いですね。整った育成施設、ドッグエデュケーションと呼ばれる訓練のノウハウ、あとたとえば、繁殖犬、つまり親犬の血統として、海外からの犬が入ってきたり。ご存じのようにラブラドールレトリーバーがいまは中心ですね。それらは、イギリス、ドイツで生まれ、アメリカで飛躍、日本はがんばってそこに追いつく、みたいな感じです。おおざっぱに言うと、ですが。

本庄 動物福祉に関してでは、世界で初めてできた動物保護に関する近代法は、イギリスで、1822年の制定なんです!

石黒 えっ! 200年近く前だ……。 日本はちょんまげ結ってる頃ですよ!(笑)

本庄 あ、ほんとですね!(笑)。日本でも昔から動物を「財物」(ざいぶつ)として保護するという概念はありました。このスタート地点自体は欧米でも最初は同じだったのですが。

石黒 ざいぶつ、ですか?

本庄 たとえば、牛や馬など、家畜や使役動物として、お金になるものとしての価値、ということです。これらが殺されたら損害が大きいということで守られていたんです。イギリスではその頃すでに、まず生き物であるから保護しようと法律が生まれました。その意識が近年に至るまでに、ヨーロッパからアメリカへ、さらにアジアへと広がっていきました。

広い敷地でのびのびと暮らす豚(アメリカ)