人間側の福祉ではなく、動物側から見た福祉

石黒 法整備の歴史の概略が見えてきたのですが、そもそも動物福祉という言葉を、「中の人」的立ち位置からもう少し詳しく教えてもらえますか? 

本庄 福祉というと、多くの方がつい、社会福祉などを想像しがちでしょうが、そういった人間側ではなく、動物から見た視点としての、福祉なのです。

石黒 たしかに! 僕など特に、盲導犬使用者、聴導犬使用者の本を作るなど、そこに介助犬も含めた身体障害者補助犬に関わっていると、犬と人間の福祉の関わりだと思ってましたし。

本庄 はい、それはとてもよくわかります!

石黒 補助犬以外にも、警察犬、麻薬探知犬、災害犬、救助犬とか、他にも、うちの豆柴が以前やっていた、老人施設などへ精神の癒しにいくセラピードッグとか、人の役に立つ、アシスタンスドッグはさまざまいて、福祉という言葉がそこに結びついてしまいますね。僕などはまだまだ視点が驕ってるのでしょうね。同じ生き物なのに(笑)。

本庄 いえいえ、普通ですよ(笑)。私が今している動物福祉の研究は、動物側から見てどうできるかを考えるという意味では「動物の権利」とも関連する考え方です。しかし、突き詰めていくと動物を利用するのを全否定することにもなりうる「動物の権利」とは異なり、動物福祉は利用しながら、利用方法をどうよくしていくか、利用をなるべく減らしていこうという課題に向かっています。これからまだまだ深く学び、考え、よりよい環境を作っていける、とても興味深い研究分野だと思っています。

石黒 なるほど。本庄さんの前で恐縮ですが、僕はいつも漠然とした言葉ですが「動物保護民度が上がればいいな」と言っていまして、その究極がそこに行き着きますね。

本庄 はい。と言っても、(動物を利用するのを全否定するのではなく、利用しながら、利用方法をどうよくしていくか、利用をなるべく減らしていこうという課題に向かっています。動物にもある権利のことを考えながら、)人と動物を切り離すような社会構造にならないように、提唱を続けていくのがテーマです。
(続く)

世界のアニマルシェルターは、犬や猫を生かす場所だった