7月13日より、NTTドコモやau(KDDI)などの携帯電話5社は、電話番号あてに短文を打ち込める「SMS(ショートメッセージサービス)」の相互接続を始めた。電話番号さえわかれば、異なる通信事業者間でも、短文がやり取りできるようになった。
SMSは、インターネットを利用する一般的な“携帯メール”とは異なり、電話の回線交換方式を使う。最大で全角50~70文字の短文を送受信でき、受信は無料だが、送信は1通当たり2.1~3.15円かかる。今回、2.1円のイー・モバイルを除き、4社で3.15円に大幅値下げされた。
もともとSMSの相互接続は、携帯電話の番号を持ち運べるようにしたMNP(番号ポータビリティ制度)を加速する施策として、総務省が後押ししていた。だが日本では、MNPが導入された2006年には携帯メールで事足りていたうえ、eメールのアドレスを管理するISP(接続事業者)とは利害調整でもめ続けた。また、通信事業者も「日本では、SMSの使用頻度が低いので、本音ではやりたくない」(大手通信事業者の幹部)と、話が進まなかった。
ところが、かつてSMSに猛反対していたソフトバンクモバイルが、米アップルのiPhoneが大ヒットして態度を一変させたことから、09年の秋になって急に話が動き始めた。ソフトバンクは、競争力のある新端末を手にしてMNPによるユーザー増が見込める立場になったためにSMS推進の側に回ったのだ。確かに、携帯メールのアドレスを変更しても、電話番号が変わらなければSMSで連絡できるので、機種変更に対する心理的なハードルは下がる。
もっともSMSは、文字数の制約があることもあり、あまりビジネス用途には向かない。しかも、国内外で増えるスマートフォンは、映像も送れるインターネットメールが中心であり、文字だけのSMSは見劣りする。今となっては、これだけでMNPが活性化することはなさそうだ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)