教訓6 積極的に社内外との交流を促す
イノベーションを成功させるには、社内外での豊かな交流が不可欠である。P&Gのコネクト・アンド・デベロップ・プログラムは、異分野と交わって新たな視点を得るための、大々的な取り組みの一部である。P&Gは過去数年間で、以下のことを実践してきた。
非競合企業と人材を共有する
P&Gとグーグルは2008年、数週間にわたって20余人の社員を交換した。P&Gはオンライン・ビジネスモデルに関する経験を増やしたいと考え、グーグルはブランド構築の方法についてより学習を深めることに関心があった。
外部のイノベーターの関与をいっそう高める
P&Gは2010年、コネクト・アンド・デベロップの目標を新たに設定した。
目指したのは、イノベーションのコラボレーション相手として真っ先に選ばれるパートナーになること、自社のイノベーション開発におけるコネクト・アンド・デベロップの貢献度を3倍に増やすことだ(これは、P&Gの年間売上増のうち30億ドルが外部イノベーターによってもたらされることを意味する)。
P&Gはこのプログラムを拡大して、政府研究機関、大学、中小規模の起業家、コンソーシアム、ベンチャー・キャピタルと新たな関係を結んだ。
外部から有能な人材を迎え入れる
P&Gには、内部昇進の伝統がある。しかし、このアプローチに頼り切ってしまうと、新しい成長事業を生み出す力が制限されるおそれがあることに気づいた。
そこで、核となるケイパビリティ以外のニーズに対応するために、アジル・パースーツ・フランチャイジングの運営に当たっては、上層部の人材を外部から迎え入れるようになった。それにより、内部開発では長い年月を要したと考えられるフランチャイズ型ビジネスモデルのノウハウをいっきに手に入れることができた。
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大企業でありながら、イノベーティブな成長事業を創出しようとするのは愚行だとする意見もある。イノベーションに関しては、将来有望な新興企業を買収し、アウトソーシングにとどめておくべきだというのだ。
しかし、P&Gの取り組みは成果を上げているように見える。振り返ると、2000年時点で、P&Gのイノベーション活動のうち売上げと利益目標を満たしている割合は、わずか15%だった。その割合は現在、50%にまで高まっている。
P&Gにとって2010年度は史上屈指のイノベーションが豊富であった年となり、今後3年ないしは5年のイノベーション・ポートフォリオは成長目標の達成には十分な状態にある。予測では、2014年と2015年の通常の活動から生み出される売上げは、現行の取り組みからの売上げの約2倍となる見込みである。インプットを大きく増やさなくても、アウトプットが6倍に増える。
我々の経験上、個人の創造性は予測もコントロールも不可能だが、集団の創造性は管理可能である。〈タイド〉や〈クレスト〉の次なるイノベーションはつまずくかもしれない。しかし、ニュー・グロース・ファクトリーの体系的なアプローチによって、さらに多くのイノベーションが市場に送り出されることだろう。
ニュー・グロース・ファクトリーのプロセスには、持続可能な売上成長源を生み出す可能性がある。それは、会社がどれほど大きくなろうとも失われることはない。