教訓5 適材適所で人材を確保する
P&Gはニュー・グロース・ファクトリーの構築に際して、各チームの人員配置の方法を改めることを迫られた。
P&Gでは常時、何百ものチームが多種多様なイノベーション活動に取り組んでいる。かつては、ほとんどのチームが、主に非専任メンバー、つまり他の業務をかけ持ちしている社員で構成されていた。
しかし、破壊的イノベーションと転換的持続的イノベーションへの取り組みは、片手間にできるものではない(古いことわざにあるように、1人の女性が赤ん坊を産むまでに9カ月かかるからといって、9人の女性を集めても1カ月で産むことはできない)。毎日、朝から晩まで新規事業のことだけを考えているような人が必要なのだ。
ニュー・グロース・ファクトリーのチームは小回りが効く少人数で、経験豊富なメンバーを入れる体制が望ましい。P&Gが気づいたように、大規模なチームは一度に追求するアイデアの数が多すぎて、身動きが取れなくなることが多い。一方、小規模なチームは最も有望なイニシアティブに素早く焦点を合わせることができる。
また、決め手に欠けるデータであったり、そもそも入手不能であったりする場合でも、チーム内にイノベーションの経験の持ち主が何人かいれば、自信を持って妥当な判断を下せる。
最後に、ニュー・グロース・ファクトリーの構築には、広範囲に及ぶ継続的なトレーニングに大きく投資する必要がある。
マインドセットの変革は文字どおり、新しい言語を教えるところから始まる。「破壊的イノベーション」「処理されるべきジョブ」「ビジネスモデル」「重要な仮説」といった主要な用語は、明確でかつ一貫性を持って定義されなくてはいけない。
P&Gでは、大規模なミーティングでも、的を絞った小規模なワークショップでも、イノベーションの主要概念に関する知識の強化を図っている。
2007年には「ディスラプティブ・イノベーション・カレッジ」も開設した。このトレーニングでは、新しい成長に向けたプロジェクトに取り組む社員のために、イノベーションの基本用語から、TLEの設計と実施、ビジネスモデルの原案づくり、新成長チームの人員配置、処理されるべきジョブの特定に至るまで、十数種類の講座を用意している。