コラム:P&Gの4種類のイノベーション
Sustaining
持続的イノベーション
持続的イノベーションは、既存製品の漸進的改善をもたらす。つまり、衣料用洗剤の洗浄力をもう少し高めたり、歯磨き粉の味をさらによくしたりといった類である。
P&Gではこの種のイノベーションを「"er"ベネフィット」と呼んでいる。「よりよい」(better)、「より簡単な」(easier)、「より安い」(cheaper)といった便益をもたらすものだ。これらは、既存顧客のシェアを維持するうえでも、製品を試そうとする人を増やすうえでも重要である。
Commercial
コマーシャル・イノベーション
コマーシャル・イノベーションは、創造的なマーケティング、パッケージ、プロモーションのアプローチによって、既存の製品やサービスを成長させる手法である。
P&Gは2010年、バンクーバー冬季オリンピックの開催期間中、母親を賛美する広告キャンペーンを展開した。18ブランドにまたがるこのキャンペーンは、何億人という消費者が繰り返し目にすることとなり、1億ドルの増収につながった。
Transformational-Sustaining
転換的持続的イノベーション
転換的持続的イノベーションは、既存の製品やサービスのカテゴリーを再編成するものである。この種のイノベーションは、桁違いに業績を改善し、事業を抜本的に変化させ、市場シェア、利益水準、消費者受容度を飛躍的に向上させることが多い。
P&Gは2009年、シワ取りクリーム〈オーレイ・プロX〉を発売した。不況のどん底で1個40ドルの製品を投入する戦略は、疑問に思われるかもしれない。しかし、P&Gは歩みを止めなかった。この製品を転換的持続的イノベーションと見なしていたからだ。
〈オーレイ・プロX〉には、はるかに高額で処方箋が必要な他社のシワ取りクリーム製品と同等の効果があり、P&Gの他のアンチ・エイジング製品よりも優れていることが臨床的に実証されていた。このクリームと関連製品は、発売1年目で、アメリカの食品小売店とドラッグストアだけで5000万ドルを売り上げた。
Disruptive
破壊的イノベーション
破壊的イノベーションはこれまでにないビジネスチャンスとなる。P&Gが〈スウィッファー〉や〈ファブリーズ〉で行ったように、根本的に新しい製品やサービスによって、まったく新しい事業に進出する。(本文へ戻る)
佐藤咲子/訳
(HBR 2011年6月号より、DHBR 2011年10月号より)
How P&G Tripled Its Innovation Success Rate
(c) 2011 Harvard Business School Publishing Corporation.