教訓2 意思決定にポートフォリオ思考を使う
P&Gは社内外のステークホルダーに対して、持続的イノベーションから破壊的イノベーションまで、さまざまなアプローチを用いたイノベーション・ポートフォリオを構築中であると伝えている(コラム「P&Gの4種類のイノベーション」を参照)。
P&Gでは、イノベーションの歩調を事業全体のニーズに合わせるために、一連のマスター・プラン策定ツールを使用している。また、マネジャーが最も見込みの薄いプログラムを特定して打ち切り、最も有望なプログラムを育成するうえで役立つ、ポートフォリオ最適化ツールも採用している。
これらのツールを使って、進行中のアイデアすべてについて、財務予測、必要な人的投資や設備投資の見積もりを行う。各アイデアの評価には、伝統的なNPV(正味現在価値)の算定や、リスク調整済みリアル・オプションのアプローチ、あるいはより定性的な基準が用いられることもある。
これらのツールによって、プロジェクトがランク付けされたリストが作成されるが、P&Gのポートフォリオ・マネジメントの中核はけっして機械的な作業ではない。たとえば、資源配分と事業成長の構成要素を話し合う。数値データは参考にするが、それに頼って意思決定を下すわけではない。
ポートフォリオのアプローチには、いくつか利点がある。第一に、株式や不動産に投資する投資家がさまざまな基準でそれらを評価するのと同じく、さまざまなプロジェクトがさまざまな方法で管理、資源配分、測定されるという期待感が生まれる。
第二に、ポートフォリオの大部分は、持続的イノベーションや転換的持続的イノベーションの取り組みから構成されているため、全体として、コア事業を保護・拡大するこれらの活動の重要性が浮き彫りになる。
最後に、ポートフォリオ・アプローチは、次のようなメッセージを強調する効果がある。
いかなるプロジェクトにもいえることだが、とりわけ破壊的イノベーションを目指すプロジェクトはリスクが大きく、商業的な成果を生み出さない可能性もあるが、ポートフォリオでそのリスクが吸収される限りはかまわない、というメッセージである。