リーダーにとっての6つの教訓

 どのような企業でも、ニュー・グロース・ファクトリーを構築しようとするなら、シニア・マネジャーが正しい組織構造を構築し、適切な資源配分を行い、実験と学習に十分な時間を割き、みずから関与していかなければ、失敗に終わるだろう。

 我々がたどった道のりを振り返ると、ニュー・グロース・ファクトリーの創造を目指すリーダーにとって6つの教訓が浮かび上がってくる。

教訓1 ニュー・グロース・ファクトリーをコア事業と緊密に連携させる

 リーダーは、新しい成長を促す取り組みを、コア事業を強化する取り組みと完全に別物と見なすことが多い。たしかに何年もの間、イノベーションの世界では、同様の議論が大勢であった。しかし我々の経験では、逆である。

 第一に、新しい成長を促す取り組みは、健全なコア事業の存在があって成り立つものである。何しろ、健全なコア事業は、新しい成長に投資できるキャッシュフローを生み出す。

 また、だれもが知っているとおり、コア事業が不調であれば、経営陣はそのコア事業のみに注意を向ける。コア事業が健全であってこそ、リーダーはより広範な成長に向けた取り組みについて考えられるようになる。

 第二に、コア事業は新しい成長への取り組みを支えていくケイパビリティの宝庫である。たとえば、P&Gは大手小売業者との間に素晴らしい関係を築いている。これは、ニュー・グロース・ファクトリーの取り組みを後押しする一助となる、強力かつ模倣しがたい資産である。こうした関係なくして、〈スウィッファー〉は〈スウィッファー〉たりえなかっただろう。

 第三に、コア事業での取り組みを管理するツールの一部、なかでもプロジェクトの進捗を追跡するツールは、新しい成長への取り組みを管理するうえでも役立つ。

 そして最後に、ニュー・グロース・ファクトリーにおける迅速な学習のアプローチは、既存の製品ラインを強化する知見をもたらすことが多い。

 2004年に開催されたワークショップに参加したプロジェクト・チームの1つは、新興国市場で布おむつから紙おむつへの切り替えを促すことを目指していた。その後の市場テストで、きわめて重要な発見があった。紙おむつを着けた乳幼児は、布おむつを着けた乳幼児よりも寝つきが30%早く、睡眠時間が30分長かったのだ。これは、乳幼児(とその親)にとって明らかなメリットであった。このメリットを謳った広告キャンペーンの効果もあって、〈パンパース〉はいくつかの新興国市場でナンバーワン・ブランドとなった。