新しいビジネスモデルの店舗〈タイド・ドライ・クリーナーズ〉
〈スワッシュ〉が新しい製品ラインだったのに対して、〈タイド・ドライ・クリーナーズ〉は、まったく新しいビジネスモデルである。
事の始まりは、あるチームが、ドライ・クリーニング市場で破壊的イノベーションを生み出す方法を探っていた時にさかのぼる。そのチームは、P&Gが持っている技術に加えて、既存の選択肢への消費者の不満に関する洞察から導き出された、独自の店舗設計を用いようとしていた。
既存のドライ・クリーニング店の多くは薄汚れた印象で、およそ快適な店とはいえなかった。顧客は車を停めて歩く必要があり、店頭でも待たされる。不便な営業時間である場合も多い。
そこで、P&Gは代案を出した。それは、特殊なクリーニング処理、ドライブスルー窓口、営業時間外の預かりや引き取りが可能な24時間保管ロッカーを目玉とした、明るく大胆な色使いのドライ・クリーニング店である。
開発チームは、ニュー・グロース・ファクトリーのプロセス・マニュアルを用いて、このドライ・クリーニング店の提案でカギとなる前提を特定した。
たとえば、このビジネスモデルは、フランチャイズ権に最高で100万ドルを支払うことをいとわない店主を引きつけるだけのリターンを生み出せるのだろうか。
その答えを明らかにすべく、開発チームは2009年、指南役の支援の下で、カンザスシティに3つのパイロット店をオープンさせた。
また同年、P&Gはこのような取り組みを監督する子会社として、アジル・パースーツ・フランチャイジングを設立した。そしてドライ・クリーニングのベンチャー事業の所有権を、P&Gの既存の仕組みの外にある新たなビジネスモデルの追求を主たる使命とするフューチャー・ワークスに移管した。
〈タイド・ドライ・クリーナーズ〉がどの程度成功するかはまだわからないが、2010年、明るい兆しが見られた。中華料理レストラン・チェーンを運営するパンダ・レストラン・グループの創設者であるアンドリュー・チェンが、4年間で150のフランチャイズ店を開く計画を発表したのだ。
チェンは『ビジネスウィーク』誌に、「マクドナルドのフランチャイジー募集には乗り遅れました。しかし、今度は乗り遅れません」と語っている。
〈タイド〉のさまざまなイノベーション活動では、戦略面での一貫性と賢い資源配分を確保するために、数人のリーダー──CEOのマクドナルド、CTOのブラウン、ハウスホールド事業ユニット副会長、ファブリック・ケア事業プレジデント──の間で定期的な対話が持たれ、緊密な連携が図られた。また、コーポレート・イノベーション・ファンドの会議や同様のレビューでも、議論の中心にもなってきた。
これは、単に一つのイノベーションを理路整然と追求するというだけの話ではない。成長のなかでアイデアがたえず生み出されているということの一端、つまり、それは「工場」が活発に稼働しているという証である。