事前の資料集めが大事
証拠次第で取り戻せる額が違ってくる
ここで言っている“資料”とは、取りも直さず、争ったときの証拠書類となるものです。裁判はもとより争いごとはすべて証拠が決め手になります。でなければ、単なる“口争い”だけで終わってしまいます。
口争いでは、誰も間に立ってくれないでしょう。まして公的機関に間に立ってもらおうと思ったら、証拠書類でしか判断してくれません。口で言っているだけでは、本当かうそか判断できないのですから、当然です。
未払い残業代を請求する場合は、先に指摘したように残業をした実態を示すデータと、残業に見合った割増賃金が支払われているかどうかを証明する「給与明細書」が最も重要な証拠書類となります。
これらの証拠書類があれば、「事実がどうだったか」が明らかになるので、言い訳無用の世界になるのです。当事者同士にとっても、また第三者にとっても、事実に対しては議論の余地はありません。
労働審判や民事訴訟になったとき、それら証拠書類における確実性のレベルによって、未払い残業代の取り戻せる額が違ってきます。審判や判決になったときは、曖昧な部分はカットされてしまい、動かしがたい事実として認定できる部分のみ会社に支払い命令が下されることになるでしょう。
和解でも同様です。会社が「そこは曖昧だから払えません」と主張すれば、その部分は妥協せざるをえなくなります。したがって、曖昧性が高く、かつその範囲が広ければ広いほど、和解の額が減っていくことになるのです。
「争っても取るんだ!」と決意したら、まずは証拠集めから始めるべきです。できるだけ議論の余地の少ない確かな証拠、言い換えれば、証拠レベルの高いものを意識しながら集めるようにすることです。
証拠がしっかり集まるまでは、会社はもちろん、親しい同僚にも決意を口外しないほうがいいかもしれません。準備段階は“こっそり”が原則です。