まずCNNは、自国アメリカで巨大なビルに飛行機が激突するという前代未聞の事件があったわけですから、画面の中はずっとパニックでした。ものすごい量の埃と突風が吹き荒れる路上で「Oh my Goooooood!」と叫び続けるニューヨーカー達、「逃げろ!」「また来た!」「ビルが倒れるぞ!」などの怒声、悲鳴、叫び声……。CNNはパニックになった街の様子を延々と映し出していました。悲痛な臨場感に溢れる映像の連続で、CNNを見ていると現地の混乱した様子が手にとるように伝わってきたのです。

日本人の安否ばかり伝えるNHK

 そのころNHKはなにを報道していたでしょう?

 ビルの倒壊など衝撃的な映像も交えながら、NHKがひたすら報道していたのは、飛行機が激突し崩壊したワールドトレードセンターにオフィスを構えていた日本の金融機関の社員名でした。

 ワールドトレードセンタービルは金融エリアのシンボル的なビルだったので、各国の金融機関がオフィスを構えており、その中には日本の銀行もありました。NHKはこれらの銀行で働いていた行員名やその年齢を字幕つきで延々と報道しはじめたのです。

 ちなみにNHKが報道する名前はほぼすべて日本人名でした。同じオフィスで働いているであろう米国人社員の名前は、NHKが報道すべき情報であるとは扱われていなかったようです。

 また、そのビルにオフィスがある米国や欧州の金融機関にも日本国籍の社員が働いていたと思うのですが、それらも報道されていませんでした。NHKはおそらく日本の金融機関の東京本社人事部から「ニューヨーク支店在籍の日本人社員名簿」を入手して報道していたのではないでしょうか。