報道スタイルを「思考の棚」に整理する

 たとえば今回の例では次の図のように、縦に「3つの国のテレビ局」を、横に「事件が発生した場所」を並べた、3×3のマス目状の「思考の棚」をつくることができます。

 9・11の際、3つのテレビ局の番組を見ていて得た情報はこの表の左側の列に格納されます。そして真ん中と右欄のグレーに塗られた列が、今後手に入れたいと考えている情報の格納場所です。

 ちきりんはこのような表を「思考の棚」と呼んでいるのですが、こういった表を頭の中にもっていると、ロンドンや東京でなにか大きな事件が起こったとき、すぐに「3つのテレビ局の報道はどうなっているだろう!?」という疑問を思い出すことができます。

 また事件が起こらなくても、どこかでCNNやBBCに勤めている人に会ったときに、すかさず「じつは9・11の際の各社の報道内容がずいぶん違っていたのだけど、これは各社の報道方針の違いでしょうか? それとも事件の場所と自社の場所の距離の違いだと思いますか?」と質問することができます。  

 9・11のときに得た、“3つのテレビ局の放送スタイルの違いに関する情報”を、こういった思考の棚に格納することにより、「自分が探している情報はなにか?」(図の「?」の部分はなにか?)ということを意識しておくことができ、そうすれば実際にそれらの情報に触れたときに、すぐにそれが自分の探していた情報であると思い出せるのです。

 そうでなければ、「僕は昔BBCで働いていたんだ」という人に偶然に会っても、なんの質問も頭に浮かばず、単に「へー、BBCですか! かっこいいですね!」で終わってしまうことでしょう。

 このように、情報を適切な棚の中に整理しておけば、「情報感度」を大きく高めることができます。なにげないものを見て「あっ、なるほど!」と瞬時になにかを考えつく人の頭の中には、「次に自分がほしいのは、こういう情報だ」ということが明確にされた「思考の棚」が存在しているのです。

 しかも、そういう人はひとつ、ふたつではなく、数多くの「思考の棚」を頭の中にもっていて、それらに当てはまる新しい情報をどん欲に探しています。なにを見てもなにを聞いても「なぜそんなことを思いつくの?」という人の頭に入っているのは、大量の知識ではなく多数の「思考の棚」なのです。

 

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