第3回目は英語でコミュニケーションをとるときに必要なものについて、外資系トップの言葉をご紹介する。英語ができるだけでは意味がないと力強く語っていただいたのは、ボッシュの織田秀明氏である。

 日々、グローバル社会とのアクセスが求められてくる外資系トップたち。さぞや流ちょうな英語をしゃべるのでは、と思いきや、実は必ずしもそうではない、という意外な事実が『外資系トップの英語力』の取材を通じてわかった。

 もちろん、流ちょうであるにこしたことはない。しかし、うまくしゃべることは、英語を使う目的ではない。これは外資系トップたちが口をそろえて語っていたことだ。ロジックはシンプルである。逆に上手な英語をしゃべれたら、優れたビジネスパーソンになれるのか、ということである。

 実際、外資系トップを務めながら、今なお英語には困っているのだ、と苦笑いしながら語ってくれたのが、ボッシュの織田秀明氏だ。世界で28万人が働き、売上高も5兆円を超える自動車業界では誰もが知る企業がボッシュ。日本法人の約7000人を率いているのが63歳の織田氏。大学卒業後に入社し、技術者としてキャリアを積んできた人物である。本社は渋谷にあるが、取材は戦前からの歴史を持ち、16万平方メートルという広大な敷地がある東松山工場で行われた。

英語がほとんどできない状態で
いきなり40歳で海外駐在

ボッシュ株式会社 取締役社長 織田秀明氏

「英語について特別な勉強なんか、一度もしたことはないですね。すべてOJT(オンザジョブ・トレーニング)です。仕事を通じて、現場で覚えた。最初は入社7年目、30歳になる直前。いきなり上司に、海外視察団に入ってこい、と言われたことでした」

 その後、幾度かの海外出張はあったものの、英語がほとんどできない状態で、いきなり40歳にして海外駐在を命ぜられる。それこそ、筆談や絵で外国人に伝えたいことを伝えるようなところからのスタートになったという。