「でも、やがてできるようになったカタコトの英語でも、交渉はちゃんとできるんですね。品質問題が起きて、威圧的なものすごい英語で、すべての責任を負え、と取引先から責められたことがありました。でも、冷静になって必要なことだけを私は伝えたんです」
相手はカンカンになっていたというが、最終的には正しいことは認められたのである。相手には納得してもらい、むしろ後には信頼までしてもらえたという。
「やっぱり気持ちは通じるんです。英語力なんかじゃないんですよ。問われているのは、自分たちの仕事に対する姿勢であり、誇りであり、事実なんです。それさえ伝えられればいい」
相手に合わせない人たちとのコミュニケーション
ハートを伝える技
そもそも世界のビジネスは、日本人の感覚とは違う、と織田氏。
「日本人はどちらかというと、相手にそれなりに合わせようとしますが、向こうはしないんです。有利と見れば、いろいろな材料で次々に踏み込んでくる。だから、むしろ誤解を生み出すかもしれないと思ったなら、できるだけしゃべらないほうがいいんです。言葉は少なくする。その分、ハートを使う。一生懸命、説明しようとすれば、心は伝わるんです。相手もちゃんと聞いてくれる」
だからこそ必要なのは、コミュニケーションの訓練だという。英語云々ではない。積極的に人と話し合いをすることだ。
「言葉がうまくなる必要なんかない。コミュニケーションができればいいんですから。それこそ最悪なのは、英語だけできて、心がない人です。中身がない人。これは、相手からも信用されない。それこそ僕は、本当に必要なときには、通訳を使えばいいと思っています。でも、英語ができるだけの通訳じゃダメなんですね。ビジネスのわかる通訳でないと。コミュニケーションって、そういうことですから」