営業とマーケティングは、昔から仲が悪い。しかしながら、販売効率を高め、収益性を向上させるには両者の連携プレー、ひいては一体化が求められる。とはいえ、そもそも利害も文化も異なるため、なかなか一筋縄にいかない。航空、重機、素材、医療機器、電子製品、金融サービスなど、多岐にわたって調査したところ、営業とマーケティングの関係を改善し、有機的なコラボレーションを実現させるフレームワークが見えてきた。本稿では、そのポイントについて体系的に解説する。
近くて遠い2つの組織
ずいぶん前のことだが、某メーカーの設計部門は、完成した設計仕様書を製造部門に渡すだけでなく、早期段階からその意見を取り入れることで時間とコストを節約できることに気づいた。設計部門と製造部門のコラボレーションは会社にも顧客にも有益であり、相互不干渉であることはまことに効率が悪い。
Philip Kotler
ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール・オブ・マネジメントのS.C.ジョンソン・アンド・サンズ記念講座教授。HBR誌への寄稿はこれまで11本ある。
ニール・ラッカム
Neil Rackham
ポーツマス大学客員教授。著書にSpin Selling, McGraw-Hill, 1988.(邦訳『SPIN式販売戦略』ダイヤモンド社、1995年)、共著にRethinking the Sales Force, McGraw-Hill, 1999.がある。
スジ・クリシュナスワミ
Suj Krishnaswamy
シカゴを本拠とする、ストラテジック・インサイツの創業者兼社長。同社は営業とマーケティングの統合を目指した事業戦略の構築と市場調査を行う。
同様に、営業とマーケティングも密接に関わっている。そろそろ歩調を合わせる努力をすべきだろう。しかし現実には、両部門は異なる職能と位置づけられ、組織も別々である。当然、両部門が一緒に働いたとしても、息が合うことは稀である。
販売実績が予測を下回ると、マーケティング部門は「完璧な計画を立てたのに、営業が実行しなかった」と非難の声を上げる。かたや営業部門も黙っていない。「価格が高すぎるし、計画を実行するには予算が足りない。我々の体制も完璧ではないのだから、販売手数料を引き上げることもままならない」と訴える。
営業担当者は、マーケターは顧客の実情を知らないと思っている。一方マーケターは、営業担当者の近視眼的な態度にいら立つ。個々の顧客行動ばかり見ていて、市場全体の動きに無頓着だから、長期的視点で物事を考えられないと不満を感じている。要するに、2つの部門は互いの貢献を評価していないのである。