経営理念やビジョンは企業の存在意義や使命を普遍的な形で表したものであり、経営戦略はそれを具現化するための基本的な枠組みだ。経営戦略は全社戦略、事業戦略、機能戦略から構成される。それぞれの戦略レベルにおいて、経営理念やビジョンとの一貫性や、他の戦略レベルとの整合性を持たせることが重要だ。

経営理念/ビジョン

 経営理念(企業理念とも呼ばれる)は、企業の存在意義や使命を普遍的な形で表した基本的価値観である。経営理念を通じて、経営者は「会社や組織は何のために存在するのか、経営をどういう目的でどのような形で行うのか」といった基本的な考え方をステークホルダーに知らしめ、従業員に対して行動や判断の指針を与える。そうした価値観に対して従業員の共感が得られれば、企業内の求心力が高まり、働くインセンティブにもつながる。このように、経営理念は企業文化の形成においても重要な役割を果たしている。

 経営理念は行動規範や成功の必須条件、経営姿勢、企業の存在意義などさまざまな形で表現されるが、一般的には時代の流れを超えた長期的な視点で、社会(顧客)と従業員に関する考えを語ったものが多い。

 これに対してビジョンは、経営理念で規定された経営姿勢や存在意義に基づき、ある時点までに「こうなっていたい」と考える到達点、つまり自社が目指す中期的なイメージを、投資家や従業員や社会全体に向けて示したものだ。

戦略レベル

 経営理念ビジョンは経営者の意志や従業員の夢を表しているが、企業の現実の姿との間にはギャップが存在するものである。経営戦略はそのギャップを埋めるための具体的な方法論を示すものだ。経営戦略は通常、全社的な視点(全社戦略)、個別事業の視点(事業戦略)、機能別の視点(機能戦略)という3つの戦略レベルで策定される。それぞれ検討すべき内容や役割は異なるが、いずれのレベルでも、経営理念やビジョンとの一貫性、戦略レベル間での整合性を保つ必要がある。