福島とそれ以外では
被災の「質」が違う

──原発避難と震災被害で避難している人とでは、問題が本質的に違いますね。

 そうなんです。原発や福島に対する無理解と偏見、差別があり、その根底には「構造的暴力」があります。震災の被災と原発の被災では問題の「質」が違うんです。

 また、「ふるさとの喪失」も福島の特徴です。

 福島と宮城・岩手の人を同じように“被災者”と括っても、ふるさとの奪われ方が違います。地震・津波の被災者は、高台移転があって地元を復興しようとしています。

 しかし、福島の帰還困難区域の人はふるさとを汚されたわけです。指示が解除されて、帰還してもよくなった人は、「本当に帰還していいの? 安全なの?」と考えるし、帰還するにしても住宅やインフラが不十分です。

 私の知人は、地元を見に行ってショックを受けて帰ってきました。「もう前の町ではなくなっている」と言うんです。住人がごそっと変わっていて、原発事故の作業員の宿舎がたくさんあり、街のあちこちに力が強そうな作業員が歩いている。もう、静かに子育てできるような“住宅地”という環境ではなくて、地元が工事現場になってしまっていると言うんです。

──国の責任についてはどのようにお考えですか。

 元に戻せないからこそ、きちんとした救済をして、国と東電は被災者にきちんと謝罪をすべきなんです。

 例えば80年代の薬害エイズ事件は、国の管理不行き届きとして厚生労働大臣が謝罪し、被害者全員への補償を行っています。今回はものすごい人数が対象になるので、同じように補償することは難しいかもしれないけれど、国の歴史的な政策が誤りだったと発信しなければいけないと思います。

 毎年行っている避難者の調査では、自由記述欄に必ず「国の無責任さに怒っているし、諦めている」という声が書かれています。謝罪や方針転換が行われない限り、福島の人のPTSDの可能性を示す数値は下がらないと思います。