
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第77回(2025年7月15日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
嵩の気持ちにまったく気づかない鈍感なのぶ
『月刊くじら』の創刊号に嵩(北村匠海)が描いた四コマ漫画「ミス高知」。
ドラマ上ではのぶ(今田美桜)に似ているとされているが、絵的にはあまり似ていない。だが、嵩が8月号の表紙に描いた女性はのぶにやや似ていた。
「ミス高知」はくじらのモデルである『月刊高知』に、嵩のモデルであるやなせたかしが描いたものをまんま使っていた。だが、8月号の表紙はのぶに寄せてドラマ用に描かれたもののようだ。
実際の『月刊高知』の表紙はウェーブがかかったミディアムヘアで、のぶのモデルである小松暢を模したものだったらしい。背景のきれいなブルーに白い模様がいくつも浮かんでいるデザイン的なセンスは『高知』も『くじら』も同じ。
のぶに似ている似てない問題は、のぶにそっくりかどうかが重要ではなく、周囲は嵩の気持ちに気づいていて、表紙に込められた思いを読み取っているということなのだろう。
メイコ(原菜乃華)も東海林(津田健次郎)も岩清水(倉悠貴)も琴子(鳴海唯)も嵩の気持ちに気づいているのに、のぶだけがまったく気づいていない。
琴子「拍子抜けですね」
岩清水「表紙だけに」
ただ、嵩は、のぶに「構図が大胆で、ええ表紙やと思います」と褒められてにんまり。もうそれだけで胸いっぱいな顔を北村匠海がしている。その顔を見ただけで、こちらもなんだかうれしくなった。