激しい環境変化が抵抗勢力を生むのは世の常だが、この件は謀反や権力争いとは異なる次元の問題をはらむ。すなわち2代目社長を務めた鈴木常司氏(鈴木社長の叔父)が2000年に急死して起きた、総額486億円といわれた遺産相続バトルの再燃となり得るのである。

 常司氏の妻と鈴木社長らの間で約5年の間に、約100件も訴訟が繰り広げられ、「戦後最大級にして最悪レベルの“争続”」(関係者)となった。内部告発はこの争いに関わるものだった。

遺産相続問題が再燃すれば
現体制崩壊の危機

 本誌が入手した取締役の内部告発書面は、18年前に鈴木社長が行ったとされる株式譲渡契約書の「捏造」を暴露している。

 告発書などによれば鈴木社長は、子供がなく正式な遺書も残さなかった常司氏(当時会長)が急死した際、常司氏の妻が株式の多くを継承し、経営に影響を及ぼすことを懸念した。そこで社内にあった常司氏の実印を使って、グループ有力会社の約69万株(46%)を1株1円で常司氏が鈴木社長に譲渡する契約書を、生前の日付で捏造。それを起点にグループ支配を優位に進めた。

 告発した取締役は当時秘書室長で、鈴木社長の指示で動いた一人であるため、事情に詳しいのだという。書面は「不法行為等で手にした資本を背景に人の上に立って、自らの考えを押し通すために力を行使していくことは、今後とも許されることなのでしょうか」と結ばれている。

 関係者によると、昨年末に退任を迫られた鈴木社長が「会社がいいときに身を引くというのは悪くはない」「年末まで時間が欲しい」などと逡巡する音声記録や、当時の「捏造」を知る別の社員の証言もあるもよう。仮に常司氏の妻がそれらを根拠に遺産分割のやり直しを求める裁判を起こして勝てば、株主構成が変わるなどし、鈴木社長体制は崩れる恐れがある。

 HD広報担当者は、「取締役の主張は根拠がなく、事実ではない。近日中に刑事告訴する予定」と説明している。

 いずれにせよ、17年12月期で8期連続増収増益となり、鼻高々で臨めるはずだった今月27日のHD株主総会は波乱含みとなろう。