お前は今日、友達を作るんだ! さあ、行きなさい!

 その日は、いつものように始まりました。

 僕は教室に入り、ひそひそ声やあざけりを受けながら、席に着きました。

 でも、その日、僕は不思議な変化を感じたのです。世界じゅうのエネルギーが、僕の周りに流れてくるような感じがしました。

 この感覚はだんだん強くなっていき、休み時間になって幼稚園の周囲を歩いている最中に、突然立ち止まった僕は、くるりと園庭のほうへ向きを変えていたのです。

 いつものように、キーランの周りには少年たちが集まっていました。

 彼らを見ていた僕は、突然後ろから押される感じがしました。まるで、前へ進むように誰かに押されたようでした。

 再びそれを感じた僕は、一歩踏み出しそうになり、かろうじて思いとどまりました。誰が押しているのか確かめようと周囲を見渡しましたが、誰もいません。

 突然、頭の中でこんな言葉が聞こえたのです。

『どんなことをしても、お前は今日、友達をつくるんだ。さあ、行きなさい!』

 自分ではどうにもなりませんでした。考える間もなく、僕の足は動き始め、全速力でキーランの周囲に集まっている少年たちめがけて走っていったのです。

 僕が走ってくるのを見て、彼らは大声をあげて逃げていきました。

「見ろ、やつが来るぞ! 怪物がやってくる! 逃げろ!」

 僕はキーランに狙いを定め、キーランだけを追いかけて園庭じゅうを走りまわったのです。

 彼はとても速く走りましたが、僕は彼を追い続けました。
再び強いエネルギーのうねりを感じ、自分が押し出されるのを感じました。

 気がつくと、幼稚園でいちばん走るのが速い少年を捕まえていたのです。

 二人で取っ組み合いとなり、彼は懸命に抵抗しましたが、僕のほうが強く、とうとう地面に押し付けて動けなくしたのです。

 周囲に集まってきた子たちは、一人残らず口をポカンと開けていました。

 深い沈黙がありました。

 僕は立ち上がり、キーランに手を差し出しました。

 そして互いにしばし、じっと見つめ合いました。

 すると、彼が手を差し出し、僕の手首を握って、自己紹介をしたのです。

 その瞬間、僕の怒りも惨めさも、シューと音を立てて消えました。

 キーランが、周りにいる子たちのほうを向いて、僕を友達だと紹介してくれた時、まるで、自分の中でドアが開かれたような気がしたのです。

 僕はキーランと友達になりました。彼は人気者だったので、他の子も彼にならいました。この日から、幼稚園は恐ろしい場所ではなくなったのです。

 僕は、自分をのけ者のように感じることはなくなりました。

 クラス討論や勉強会にも参加するようになり、他の子と一緒に遊び、バスケットボールやサッカー、野球などの試合にも参加し始めたのです。ようやく、家に連れてきて遊べる友人もでき、普通の子の生活を手に入れたのです。

 その後2、3年で、僕はさらにたくさんの友人をつくりました。学年末の優等生リストの常連となり、4年生になると、成績優秀者の中に入っていました。

 でも、いまだ靴ひもを結ぶことはできませんでしたが、だからといって、もう自分を敗北者だとは思いませんでした。

 それは、いつか必ず成し遂げられる、挑戦すべき課題にすぎないのです。

 僕はこれまで、不安や恐怖に屈服していたため、かなり多くのものを失ってしまいましたが、今まさにそれを取り戻そうとしていました。

 僕は、自分の人生を改善し、みんなから抜きん出ようと決心したのです。

 そんな時、僕たち家族は、奇跡のうわさを耳にします。

*この連載は、3/5~3/9まで、5日連続で更新します。


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