実体経済:
戻った「生産量」、戻らない「生産環境」

 震災から1年が経った。この間、被災地を中心に多くの難局に直面した。経済の観点に立つと、震災前に戻った指標、戻っていない指標がはっきりしつつある。

 戻った指標の代表は鉱工業生産(図表1参照)。直近発表された1月の鉱工業生産は、前月比+2.0%と市場予測を上回るスピードで増加した。しかも、同時に発表された2月、3月の製造工業生産予測指数は、いずれも前月比+1.7%と増産が見込まれている。

 この予測指数に基づくと、3月の生産は震災直前に当たる昨年2月の生産を0.7%上回る。こうした生産量の戻りを牽引した業種として、輸送機械、情報通信機械、化学などが挙げられる。

 一方、震災前とは姿が一変したのが貿易収支(図表2参照)。日本の貿易収支は震災直後の2011年4月以降、一貫して赤字が続いている。その結果、同年の貿易収支は1980年以来31年ぶりに2.5兆円の赤字となった。

 震災後しばらくの貿易赤字は、国内サプライチェーンの損壊による「輸出減少型」であったが、昨年10月頃からは、LNG(液化天然ガス)の輸入増に象徴される「輸入増加型」に転じた。背景は、原発の停止に象徴される国内のエネルギー制約、およびそれを受けたLNGなど代替エネルギーの輸入増だ。

 国内原発の全面停止が目前に迫る中、原油価格ひいてはLNG価格の上昇の可能性も踏まえると、輸入増加型の貿易赤字が少なくとも2013年いっぱい続いてもおかしくない。震災から1年が経ち、「生産量」こそ震災前に戻ったものの、「生産環境」は様変わりしてしまった。