もう一度50代を過ごせるとすれば、30代や40代で行ってきた自己投資やトライを超える、さらにアグレッシブなトライをするでしょう。なぜならその方が結果として安全であり、安心を得られる近道だからです。なすべきと信じること、本心からやってみたいと思うことを真剣に行い、成功し、結果として安心・安全も手に入る。こうすべきであったと思っています。

安易な雇用延長ほど
危険なものはない

 定年を機に小さなビジネスを起業する人も多いと思います。典型的なのはカフェなどの飲食店の開業でしょうか。

 起業は十分にアグレッシブでしょうし、その試みは賞賛に値します。しかし、「お客様を心底楽しませるお店を作ろう」「自分が徹底的に楽しめるお店を作ろう」というのならいいのですが、「とにもかくにも安定収入を得よう」という思いで起業するのは、はなはだ危険です。なぜなら心の底にある安定志向が、ここぞという局面での判断を誤らせるからです。本来掛けるべきお金をケチってしまったがために、かえって中途半端なものを作ってしまうようなことが起こります。守ることを目的としたトライなどあり得ないのです。守るためには人生も会社も、攻め続けなくてはいけないのです。

 安定収入のための“とりあえず起業”よりさらに危険なのが、今のままをとりあえず続ける生き方です。

 大企業に勤める多くの人は60歳で定年を迎えます。そしてそのうちの多くのビジネスパーソンは65歳までの雇用延長という道を選びます。その理由を尋ねると、かなりの確率で「それまでは忙しくてその先の人生について何も考えていなかったので、考える猶予を得るために延長を選んだ」と答えます。これが、“とりあえず継続”の生き方です。

 このような理由で雇用延長を選んだ人の大半は、65歳になった時点でも、何も考え及んでいないものです。そして会社から今度こそ追い出される。60歳での雇用環境もよくありませんが、65歳になってしまえば、もはや働き口はないと思うべきです。

 だからこそできるだけ早く、60歳から先の人生のデザインをすることをお勧めするわけですが、そうは言うものの、定年後を現実感をもって考えられるのは55歳以降だろうと思い、定年前5年をターゲットにしたのです。