激流に逆らう覚悟と努力がないと
ほとんどの人がたそがれる
今回は、これから先の、まだまだ長い人生のキャリアデザインを改めて考えてみよう。この連載のテーマは、「50になっても定年前にたそがれない人生」だ。そのためには、さらにキャリアを積み重ねていくことが何よりの妙薬だと思う。
ただ、問題なのは、「デフォルトはたそがれる」ということだ。放っておけば、多分、ほとんどの人がたそがれる。そのことをまず胆に銘じてほしい。たそがれてもいいと思う人は、だからそのままでいい。
もし、少しでもたそがれたくないという気持ちがあるのであれば、頑張るしかない。ただし、激流に逆らって上流に泳ぐくらいの頑張りが必要だ。そのくらいの覚悟と努力がなければたそがれる。もちろん、これまでに挙げてきたケースからもわかるように、たそがれずに生きることは不可能ではない。
では、そうしたキャリアを考える。ここからさらにキャリア開発をする。そのために自己変革をするには何をどのようにしたらいいのだろうか。
世の中には、企業変革のための方法論は数多い。また、自己啓発のための本もたくさんある。私としては、後者よりも、むしろ合目的的な全社の理論を自己変革に応用する方法をお勧めしたい。
明治大学教授の諸富祥彦氏が著した、『学的探究における自己変容の八段階―「主体的経験の現象学」による“エゴイズム”とその克服過程に関する考察』(コスモスライブラリー)という本がある。これはトランスパーソナル心理学の権威である著者が、中学3年から大学3年にかけて「本当の生き方」を求めて苦悩する自分自身について現象学的に分析したものだ。
この本について、またトランスパーソナル心理学について説くのは、本稿には馴染まないので、関心のある方はこうした書籍を手に取ってほしいが、本当の自分というものを見つけようと思うと、多分、こうした哲学的なプロセスを踏むしかないのだろうと思う。この世に数多くある自己啓発に関する書籍の多くは、正直、そこまで行かずにお茶を濁していると感じることが多い。
トランスパーソナル心理学を突き詰めるということは、言ってみれば自分で自分に対してセンシティビティ・トレーニングを行うようなものだ。このトレーニングは、日本語で言えば感受性訓練であり、あらゆる帰属関係を断ち切って孤立状態を作り出し、1週間程度の合宿の間、グループ行動を取ることによって、強い集団参加意欲を生み出し、対人的共感性を磨くというものだ。